「世界史の扉をあけると」は「2」に継続

「世界史の扉をあけると」をお読みいただき、ありがとうございます。 「はてなダイアリー」が「はてなブログ」に移行した関係で、新しい記事は、2019年2月半ばから「世界史の扉をあけると2」https://whomoro2.hatenablog.com/に載せています。 よろしくお…

2019年センター試験・世界史B[良問はありましたが…]

詳細な分析は大手予備校などにおまかせしますが、授業のあり方との関連で、いくつか簡単に述べておきたいと思います。 【評価できる出題】 ◆次の2問は良問でした。 ① 第3問の問3 グラフの問題 以前から数量的把握の必要性を述べてきましたが、ようやく3…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑫【フンから考えるユーラシア民族移動】

◆古代世界の終末を、フンと呼ばれた人々の移動から考えてみます。ゲルマン人の大移動の授業で、発展的に取り上げてきました。◆高校の教科書には「フン人」とあります。しかし、特定の均一な民族ではありませんでした。私は、「ヨーロッパ側からフンと呼ばれ…

★『聖書』とは? 翻訳とは? −新訳(聖書協会共同訳)に思うこと−

『聖書』の新しい翻訳が行われ、旧約・新約合わせて、先ごろ出版されました。1987年の新共同訳から31年ぶりとのことです。「聖書協会共同訳」と銘打たれています。 帯に「ゼロから翻訳」とありましたので、興味深く手に取りました。まだところどころ読んだだ…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました ⑪ 【アレクサンドリアと『聖書』翻訳】

◆「アレクサンドリアと『聖書』翻訳」というタイトルには、多くの方が違和感を感じるかも知れません。◆世界史では、アレクサンドリアは、アレクサンドロス大王やプトレマイオス朝とだけ結びついています。しかも、一般に、ヘレニズム時代は軽い扱いです。◆そ…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑩【ルネサンスからバロックへ】

◇ルネサンスからバロックへの変化は、それほどわかりやすいものではありません。世界史の教科書でも、ルネサンスからバロックへの移り行きは、明確には述べられてこなかったと思います。◇教科書では「17世紀にはバロック美術が盛んになった」と述べられてい…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑨【ヘンリ8世の首長「法」】

◆16世紀イングランドの首長法をどのような歴史的文脈で教えるかは、大変重要です。◆「エピソード紹介型授業」に傾斜すると、次のような内容になりがちです。 <ルターやカルヴァンと違い、イギリスの宗教改革は国王の私的な離婚問題から始まった。>◆一見、…

近世 ヨーロッパ 【<ルネサンス>の授業のために −新科目「世界史探究」に向けて−】

◇新学習指導要領の「解説」は発表されましたが、「世界史探究」がどんな科目になるのか、まだ具体的なイメージが湧きません。◇「解説」は、とても3単位で行えるような内容ではありません。どのような教科書が作られていくのでしょうか? 現場での単位増はど…

近世 ヨーロッパ 【宗教改革期のイコノクラスム(聖像破壊運動)】

<世界史における聖像> ■聖像をめぐる問題は、単なる宗教史の枠を超える問題です。時には歴史を動かす大問題となりましたし、人々の心性や社会生活を考えるうえでもたいへん重要です。■世界史の授業の中でも、聖像を取り上げることは大切です。たとえば、ユ…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました ⑧【絵画・航海日誌・音楽で考える大西洋奴隷貿易】

★今回は、「考える授業」のための「教材の工夫」がメインになっています。★教科書と図表を使うことで精一杯の場合もあるかと思いますが、少し「教材の工夫」をすることで、生徒たちの取り組みが違ってきます。★今回の授業は、絵画史料と世界史上の出来事を結…

★ロシア革命とは何だったのか<4つ見方と池田嘉郎『ロシア革命』>

◆昨年(2017年)は、ロシア革命からちょうど100年という年でした。◆日本では(世界でも?)、それほど大きくは取り上げられなかったと思います。新聞紙上では、10月に若干の特集記事が見られました。雑誌では「現代思想」が、力の入った特集を10月号で組んで…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました ⑦【「インド=ヨーロッパ語」とイギリスのインド進出】

■毎年、オリエントの授業で、予備校の生徒たち(浪人生)に尋ねています。 「インド=ヨーロッパ語系っていう語が出てきた時、なんか変な感じしなかった?」 年度によって多少違いますが、3分の2の生徒は「変な感じがした」ということでした。 「何が変だ…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑥【三権分立:生徒たちの誤解を解く】

◆18世紀のフランス啓蒙思想は、フランス革命やアメリカ独立革命を考えるうえでも、近現代の民主政治を考えるうえでも、大変重要です。◆授業では、モンテスキューの三権分立論に一定の時間を割くようにしています。◆10数年前、三権分立についての生徒たちの理…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑤【もっとラテンアメリカを知る】

◆ラテンアメリカについては、教科書で扱われているページ数は多くありません。センター試験でも出題は限られています。◆生徒たちも教員も、ナスカやマチュピチュなどの遺跡には関心がありますが、ラテンアメリカの歴史全体への関心は高くありません。◆「ヨー…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました④【「パジャマ」から考える言語の授業】

■言語や文字の歴史は、世界史の中の重要な要素ですが、必ずしもていねいに取り上げられていないと思います。■幼少期に外国で暮らした経験をもつ高校生や外国人と接している高校生が以前よりは増えているものの、多くの生徒は「学校英語」を中心に学んでいる…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました③【ラヴェンナとユスティニアヌス大帝のつながりは?】

■ビザンツ帝国(ユスティニアヌス大帝の時代までは「東ローマ帝国」と呼んだほうが適切ですが)の授業でラヴェンナを取り上げることは、標準的な授業ではないと思われるかも知れません。■しかし、以下の文章を読んでいただければ、ごく標準的な内容(旧西ロ…

古代〜現代【共和政を理解しづらい生徒たち −政体の理解の重要性−】

◆世界史教育において、政体は必ずしも自明なものではありません。教員も、きちんとした定義はしないまま、専制君主政、共和政などの用語を使っているのが現状だと思います。◆一般的な使用では錯綜が見られ、学問上も諸説がありますので、政体の理解は簡単で…

古代〜現代【歴史における遺体・遺骨(ジャンヌ・ダルクと劉暁波)】

◆ネアンデルタール人から始まったとされる死者の埋葬は、人間にとって大変重要なものであり続けています。◆葬送儀礼のあり方や遺体・遺骨・遺灰などの保管の仕方は、人間の歴史に深く関わってきました。◆政治的権力や宗教に関わる事例もたくさんあります。 …

世界史 こんな「考える授業」をしてみました②【中国史:南宋をしっかりとらえる】

☆宋代は中国史の画期なのですが、その授業はけっこう難しいと思います。位置づけを明確にしてきちんと取り上げなければなりません。そうしないと、生徒たちの中では、隋・唐と元・明・清の間に埋もれてしまうかも知れません。☆そのような反省も踏まえたうえ…

世界史 こんな「考える授業」をしてみました①【アウグストゥスの元首政】

★今回は、確認のための基礎的な「考える授業」です。【授業に「考える活動」を組み込む】であげた、二つの目標のうちの1に当たります。★【問3】がメインになります。「教科書のあるページの内容と別のページの内容を結びつけて理解すること」を目標にした…

★新科目「世界史探究」に向けて −「考える世界史の授業」を!−

◆「アクティブ・ラーニング」という語が独り歩きしている印象は否めませんが、授業のありかたを考え直すきっかけになっているとは思います。◆しかし、「歴史=暗記」という学習から、具体的にどうやって脱皮していけばいいのでしょう?◆たとえば、膨大な知識…

■アメリカ合衆国の光と影 [史料とコメント](その2)

<アメリカ史を考えるための史料 Ⅵ〜Ⅺ> Ⅵ ミシシッピ州憲法(1890)第8条 207項 白人と黒人の子どもたちには、それぞれ人種によって分離された学校を設ける。第14条 263項 白人が、黒人、白人と黒人の2分の1の混血、あるいは黒人の血が8分の1以上混じ…

■アメリカ合衆国 の光と影[史料とコメント](その1)

■就任したばかりのトランプ大統領のニュースを見ない日はありません。■アメリカ社会の分断はおさまっていくのでしょうか? 2017年は、やがて、世界が混乱するきっかけになった年と位置付けられることになるのでしょうか?■トランプ大統領の登場は、私に「も…

総合 【哲学? 混沌? プロタゴラス的な「折々のことば」(鷲田清一)】

★タレスが「万物の根源(アルケー)は水である」と語ってから、二千数百年。哲学は、ずっと世界の原理を明らかにしようとしてきたと思います。世界を貫いているロゴスを探求してきたと思います。★しかし、今、ロゴスとアルケーの探求を、哲学は科学に譲った…

総合 【 どう考えるべきか、「トランプ大統領」 】

◆アメリカ大統領選挙[2016/11/8]におけるトランプ勝利は、世界に大きな衝撃を与えました。◆世界史を学んできた者としてこの事態をどう受けとめればいいのか、いろいろ考えさせられました。◆これから述べるのは、結果判明から5日という時点での、暫定的な…

古代 南アジア【仏教を多角的にみる:シッダールタの生涯】

■今回載せるのは、現在、あるカルチャーセンターでおこなっている<歴史からみる仏教>(全6回)の1回目のレジュメです。■レジュメですので、流れがわかりにくいかもしれません。流れを理解しやすくするために、授業の意図などの解説(*がついている部分…

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(現代)【ハンガリー事件】

★1956年のハンガリー事件は、たいへん重要な出来事でした。この時のハンガリー政府の改革は、ソ連に鎮圧されたとは言え、1989年の東欧社会主義政権崩壊の先駆をなしました。それだけでなく、ハンガリー人にとっては、1848年のハンガリー革命を継承するもので…

近代 ヨーロッパ 【<フランス革命>の授業のために】

■戦後しばらくの間、フランス革命は、世界史の中で大きな位置を占めていました。多くの学者が、フランス革命を典型的な市民革命(ブルジョワ革命)と見ていたからです。現在からみれば、そこには、やはり「ヨーロッパ中心史観」があったと思われます。日本史…

総合 <文化史を豊かに> 【ルネサンス・バラ・庭園】

有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」には、白いバラが描かれています。絵の左半分、西風ゼフュロスが吹き起こす風の中に舞っているのが、バラです。 なぜ、バラが描かれたのでしょう? 香りの女王でもあったバラは、古代ギリシア以来、ヴィーナス(…

先史・古代 <人類の心の進化> 【花の栽培・花のデザイン】 

単純な事実ですが、私たちは、大人になっても、「マル」よりは「花マル」を好みます。それは、なぜなのでしょう? 人類はなぜ花を好むようになったのでしょうか? ネアンデルタール人は死者を埋葬して花を手向けたとも言われていますが、人類と花との関わり…