◆ラテンアメリカについては、教科書で扱われているページ数は多くありません。センター試験でも出題は限られています。
◆生徒たちも教員も、ナスカやマチュピチュなどの遺跡には関心がありますが、ラテンアメリカの歴史全体への関心は高くありません。
◆「ヨーロッパ中心史観」からの脱却を主張する方々も、アジア史や中央ユーラシア史は重視するものの、なぜかラテンアメリカ史まで視野が及ばないようです。
◆このような現状ですから、日本からのラテンアメリカへの移民の歴史も等閑視されてしまいます(ハワイや北米への移民もきちんと取り上げられているわけではありませんが)。
◆私自身は、ラテンアメリカの歴史をできるだけていねいに扱おうと努力してきました。その試みの一つが、今回の授業です。
◆大航海時代のスペイン人などの「進出」に関わっての授業です。
★まず、基本的な用語の確認です。
【問1】「コロンブスの誤解から、先住民は、スペイン語でなんと呼ばれましたか?」
☆複数の学校での経験ですが、多くの生徒たちが「インディアン」と答えるので、驚いています。スペイン語に関心がないのはやむをえませんけれど、−an が英語であるという感覚が、残念ながらないようです。
☆山川の「詳説世界史B」では、インディアンとインディオはただ並列されているだけですので、アルファベットで板書して説明しておく必要があります。
☆なお授業では、この段階で「ネイティヴ・アメリカン」まで触れています。
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★ここから、南北アメリカを大きくとらえる講義に移ります。この概説が非常に重要だと、最近は考えています。
【講義:南北アメリカの3区分】
① 現在のアメリカ合衆国、カナダ
② メキシコ〜チリ・アルゼンチン
③ カリブ海地域
☆①では「北アメリカ」という表現を使っていません。地理的には、メキシコも北アメリカに含まれるからです。(したがって、「北米自由貿易協定」にメキシコが入っているわけです。)
☆同じく①では、「アングロアメリカ」という語も使っていません。
☆②の説明で、この地域をまとめて「ラテンアメリカ」と呼ぶことを伝えます。
☆③を独立した地域区分にしています。「進出」した諸国の多様性からです。
☆イギリスのBBCのサイトでも、「ラテンアメリカとカリブ地域」という区分をしています。
☆このあと、①〜③にどんな国々が「進出」したかを説明しておきます。今後の授業展開上、欠かせない説明になります。
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★重要な問いに移り、生徒たちに考えてもらいます。
【問2】「メキシコ〜チリ・アルゼンチンを、どうしてラテンアメリカと呼ぶのでしょう? (少し間をおいて)どうして<ラテン>をつけているのでしょう?」
☆多くの生徒たちは戸惑うと思いますが、まずは、スペイン人・ポルトガル人が「進出」した地域であることを確認します。
☆その上で、いろいろなヒントを出していいと思います。
☆ただ、スペイン人・ポルトガル人の言語・民族の系統に思い当たるというのはかなり高度です。語族の一覧を見せて考えさせればいいと思います。
★答は、「スペイン人・ポルトガル人というラテン系の民族の影響を強く受けた地域だから」となります。
☆やや錯綜した印象を与えるかも知れませんが、ここでスペイン・ポルトガルがカトリック国であることを話しておきます。ラス=カサスを理解する上で必要なだけでなく、宗教改革の授業の伏線になります。