2014-01-01から1年間の記事一覧

▸【『市民のための世界史』の書評に対する桃木至朗さんの反論について】

■桃木至朗(ダオ・チーラン)さんが、ブログで 私の書評について反論していました [2014‐08‐29]。「かみ合わない議論」の一つの典型のように思われましたので、あえて感想を書かせていただきます。■執筆者の代表がわざわざコメントしてくださったのですが、…

【世界史の授業を考える(その3)】

★予備校の「世界史B」の授業の他に、9月からある高校の「倫理」の授業を、そして10月からは地域の大人のかた向けの世界史講座も担当しているため、新しい記事を書く時間がなかなかとれなくなっています。★リリーフで受験向けの「倫理」を担当するようにな…

▶書評【大阪大学歴史教育研究会編『市民のための世界史』】

☆世界史教育充実のための大阪大学歴史教育研究会の活動は、めざましいものがあります。その活動の現時点での集大成とも言うべきものが本書です。大学教養課程のテキストとして書かれました。帯には次のような言葉が並んでいて、本書の意図を伝えています。 …

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑧【司馬遼太郎『草原の記』】

世の中には、隠れた名著がたくさんあります。司馬さんの傑作小説群や紀行シリーズほどには目立ちませんが、この『草原の記』はまさにそうした本だと思います。遊牧民の歴史を縦横にたどりながら、激動の20世紀を生き抜いた、ツェベクマさんというモンゴル女…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑦【オリガ・ホメンコ『ウクライナから愛をこめて』】

ウクライナ人のオリガさんが、日本語で書いた美しい本です。 出版されたのは、ロシアによるクリミア併合(2014年3月18日)の1ヵ月半前でした。その後のウクライナの状況を思うと、痛みなしには読むことができない本でもあります。 「母親とおばあちゃんの…

復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(中世)【トルコ人の西方移動とイスラーム化(9〜10世紀)】

《復習プリントから》 *今回は、やや長い復習問題です。生徒たちにとっては理解しづらいテーマですが、文章をよく読んでいくと、授業内容が確認できるようになっています。◇( 1 )の乱[755〜63]の際に唐を助けたトルコ系ウイグル[帝国]は、オアシスの…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑥【ベルトラン・ランソン『古代末期 −ローマ世界の変容』

今回は、世界史プロパーの本の紹介です。 「ローマ帝国はなぜ滅んだのか?」という問いは、多くの人々を惹きつけてきました。ランソンは「十七世紀以来、国家の転変に関する思想が、ローマの事例から離れられなかった」と述べています。この見方は18世紀の啓…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑤【澁澤龍彦『フローラ逍遙』】

稀代のフランス文学者による、花についての博物誌的なエッセイ集。「水仙」から「蘭」まで、25の花々が取り上げられています。文庫サイズながら、1つの花に3点の古今東西の植物画がカラーで収録されている、優美な本です。 花を好きな人ならば絵を眺めてい…

復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(中世)【魏晋南北朝を大きくつかむ】

《復習プリントから》 *今回は、他のプリントとは少し違った形式にしてあります。1 魏晋南北朝という時代 ★後漢の滅亡から隋が中国を再統一するまでの約370年間 【3世紀前半〜( ア )世紀末】 ・北の( イ )世界と中国の農耕世界の対立・交流・融合に注…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]④【多和田葉子『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』】

ドイツ語と日本語の両方で小説を書いている驚くべき作家の、言語に関するエッセイ集です。深く鋭い、そして不思議にやわらかな文章は、私たちを複数言語・複数文化の最前線に連れて行ってくれます。 「エクソフォニー」とは、「広い意味で、母語の外に出た状…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]③【E.M.フォースター『アレクサンドリア』】

イギリスの作家E.M.フォースターによる、珠玉の歴史都市紀行です。 ヘレニズム時代(前334〜前30)、ギリシア文化の遺産を一手に引き受けて繁栄した、プトレマイオス朝の都アレクサンドリア。ムセイオン(王立研究所)の大図書館には50万巻の蔵書がありまし…

◆<世界史ブックガイド>と授業

◆本ブログのサブタイトルは<文化と社会の交点から見えてくる歴史>ですが、私は「文化・政治・経済の複雑な絡み合いをトータルに考える授業」を目指してきました。とても到達できそうにない目標なのですが、他のページでも述べましたように、さまざまな補助…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]②【陳舜臣『ものがたり史記』】

あまりにも有名な司馬遷の『史記』。「鴻門の会」や「四面楚歌」は、高校漢文の定番となっています。 しかし、『史記』の内容を読みやすく書いた本は、そう多くありません。文庫化されたものの中では、この『ものがたり史記』が唯一の入門書ではないかと思い…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]①【矢野久美子『ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』

近年は「倫理」の教科書にも載るようになったハンナ・アーレント(1906〜75)。20世紀を代表する政治哲学者アーレントについての、日本語で初めての評伝です。 その波乱に満ちた生涯と思索の跡をたどることは容易ではありませんが、新書という制約にもかかわ…

♥世界史の学びかた<高校生のみなさんへ>♥

■世界史は内容が豊富ですから、重要語句・人名の丸暗記ではいきづまります。では、どうすればいいでしょうか? ■「覚えなければ」という気持ちが先立ってしまうかも知れませんが、まずは「理解しよう」という気持ちになってみてください。「理解して、世界史…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その3>】

◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の3回目です。《Ⅲ.年間の授業内容(後半)です。全体として第Ⅱ部では、人間社会の発展とその中の負の歴史(インディオ人口の激減、奴隷貿易、ジャコバン派の独裁、植民地化など)を同時に見る目を養おうとしました。…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その2>】

◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の2回目です。《Ⅱ.年間の授業内容(前半)です。古代史を重視した、ちょっと変わった世界史Aです。》※参考までに、本村凌二氏の言葉を紹介しておきます。「古代や先史時代にまで目を向けなければ、壮大な人類史の流…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その1>】

★2013年度に実施した世界史Aの授業を3回にわたって紹介します。★「どんな考え方に基づき、どんな工夫がされたか」という観点で、お読みください。3回の内容は、次の通りです。 <その1> 授業の方針 <その2> 年間の授業内容(前半) <その3> 年間…

復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(中世)【プランタジネット朝】

《復習プリントから》●ノルマン朝後のイングランドでは、1154年、アンジュー伯でノルマン朝の血を引くアンリが( 1 )として即位した。これがプランタジネット朝である。彼は、イングランドおよび( 2 )西半分の広大な領土を、海峡をまたいで統治すること…

【2014センター試験分析・問題点の多い「世界史B」】

《はじめに》★センター試験の出題内容は、高校教育の現場に大きな影響を与えます。その意味では、常に良問が求められるわけですが、今回はどうだったでしょうか。★「傾向と対策」的な分析は予備校等に譲り、ここでは、出題内容・形式が「世界史教育に資する…

復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(中世)【唐後期の政治と社会】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》●755年、3節度使を兼任したソグド系の( ア )とその部下の史思明が反乱を起こし[( イ )の乱]、( ウ )の援軍を得てようやく鎮圧された。乱の後、内地にもおかれるようになった節度使は、各…