♥世界史の学びかた<高校生のみなさんへ>♥

■世界史は内容が豊富ですから、重要語句・人名の丸暗記ではいきづまります。では、どうすればいいでしょうか? 

■「覚えなければ」という気持ちが先立ってしまうかも知れませんが、まずは「理解しよう」という気持ちになってみてください。「理解して、世界史のおもしろさを感じる」ことから、スタートしてみましょう。

■学習のポイントを8つあげてあります。ポイントの1〜6は基本的なことがらです。7・8の内容は、難しく感じるかも知れません。でも、1〜6を身につけながら勉強を進めていくと、7・8を納得できるようになると思います。


1 「過去と私たちのつながり」を知る楽しみを持ちましょう

 ※たとえば、「オリンピックの起源は古代ギリシアにある」という事実を知るのは、楽しいことです。「こういうことがあって、今があるんだ!」という発見の喜び、それを勉強の原動力にしてください。歴史の勉強とは、「過去と現在のつながりを知り、未来を考えること」です。
 また、現在の世界の動きに関心を持つことも大切です。たとえば、ニュースで「スンニ(スンナ)派」とか「シーア派」という語が出てきたら、教科書や用語集で調べてみてください。そのようなことを繰り返していくと、自然に知識が増え、世界史の勉強が楽しくなっていきます。

2 予習に重点をおきましょう

 ※今まで「社会科は復習=暗記」と考えてきた人が多いかも知れません。しかし、何事も「予めの準備」が大切です。<予習+授業>で、ほぼマスターするようにしてしまいましょう。そうすれば、テスト前などの復習はラクになります。予習ノートを作ることがベストです(市販のサブノートを使ってもかまいません)。
 それができない場合は、最低でも、授業の前日に教科書を読んでおきましょう。ただその際、太文字の語句・人名だけを見ていくというような悪い習慣をつけないようにしましょう。あとあとまで影響してしまいます。予習ノートを作る時も、教科書の本文・註をていねいに読むことが大切です。

3 ヴィジュアル資料でイメージを持ちましょう

 ※文字だけで(たとえばプリントの穴埋めだけで)理解しようとすると、暗記中心の学習に傾斜していきます。歴史の勉強では、具体的なイメージを持つことも大切ですので、教科書や図表の写真を見るようにしましょう。ただ、単に眺めて終わるだけでは不十分です。短い解説がついていますので、それを必ず読むようにしてください。
 なお、世界史関係の画像は、教科書や図表に載っていないものでも、スマートフォンやパソコンですぐに見ることができます。世界遺産などについてのテレビ番組も役立ちます。

4 一定のストーリーの中で、時期や人名・重要語句を覚えましょう

 ※ストーリーは、教科書を読んだり図表の年表を確認することでつかみましょう。「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」が頭に入ってくるようになります。世界史関係のマンガも役に立ちます。
 ちなみに、 history という語には story が含まれています。ストーリーをつかみながら「なぜ?」という疑問が出てくるようになればベストです。疑問は、予習ノートなどにメモしておきましょう。

5 「どこで?」と考えたら、地図で確認し、マークしておきましょう。

 ※点(都市や戦場など)だけでなく、面(地方や国、山脈や河川とその流域、海など)も、大切です。
 なぜ地図が大切なのでしょう? 地図のチェックとは、「人びとが生きた場所=歴史の舞台」の確認のことだからです。歴史の理解のためには、地理的な把握も重要なのです。慣れると、地図のチェックが楽しくなるはずです。

6 異なる地域・国・民族の<関係>に注目しましょう

 ※<関係>で、歴史は動いてきました。複数の地域・国・民族の<関係>を理解することが、世界史を理解することにほかなりません。「AとBの対立」などということが、しょっちゅう出てきます。
 ただ、注意しなければなりませんが、歴史は対立だけで動いてきたわけではありません。「○○の戦い」や「△△の滅亡」などがたくさん出てきますが、それらだけが歴史ではないのです。モノや文化の伝播、人びとの交流や移動という<関係>にも、注目しましょう。たとえば、コーヒーはどこからどんなふうに広まったのか、仏教はどのように日本まで伝わったのか、なぜザビエルはアジアにやってきたのか、などということも大事な歴史です。
 なお、民族や言語の理解が弱くなりがちですが、世界史を学ぶ上でとても重要です。民族や言語には、意識的に注意を払って勉強しましょう。

7 文化を時代全体の動きの中で理解しましょう

 ※グローバル化が進む現在、世界の諸地域の文化を歴史的に理解することは、きわめて重要です。ところが、「文化史は丸暗記」などという「非文化的な」勉強におちいりがちです。
 教科書には文化史がまとめて書いてありますが、政治や経済や国際関係から離れて、文化というものが単独であったかのように錯覚してはいけません。
 歴史上のどんな人物も、その時代の政治的争いや経済の動き、国際関係の中で苦闘しました。さまざまの作品は、その苦闘の中で生み出されたものです。たとえば、杜甫安史の乱のさなかに「春望」を書きました。ボッカチオはペスト大流行の直後に『デカメロン』を書きました。
 文化を時代全体の動きの中で理解するようにしましょう。歴史が立体的に見えてくると思います。

8 事象と事象のつながりを発見しましょう

 ※「タテ(ある時期のある国・地域の動き)とヨコ(同時代の他の国・地域の動き)」のつながりが大切だと、よく言われます。このつながりを理解することや一見異なった事象の同時代性を発見することは、世界史の勉強の醍醐味です。
 ただ、「タテとヨコ」という言い方では、十分でないかも知れません。というのは、百年隔たっていても、数百年隔たっていても、場合によっては二千年以上隔たっていても、事象と事象がつながっていることがあるからです。そのようなつながりを発見し、歴史に「奥ゆき」を感じることができたら、世界史の勉強はますますおもしろくなるでしょう。


■補足ですが、習っている先生に、できるだけ質問をするようにしましょう。質問をするということは、とても重要です。どんなにささいな質問でも、そこには必ず「考える」というプロセスがあるからです。質問は予習・復習のしかたにもよい影響を与え、そこからまた新たな質問が生まれていきます。

■「世界史の扉をあけると」【http://d.hatena.ne.jp/whomoro】は、ブログのかたちをとった、世界史の研究・教育サイトです。他のページも読んでみてください。
 <ミニ授業>のシリーズはおもしろく読めるはずです。テーマ史は少し難しいかも知れませんが、なかには役立つものもあると思います。また、次のシリーズには、問題と解答・解説が載っていますので、参考にしてみてください。意外な事実を発見できると思います。
  ・<復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書>
  ・<問いからつくる世界史の授業>