【世界史の授業を考える(その3)】

★予備校の「世界史B」の授業の他に、9月からある高校の「倫理」の授業を、そして10月からは地域の大人のかた向けの世界史講座も担当しているため、新しい記事を書く時間がなかなかとれなくなっています。

★リリーフで受験向けの「倫理」を担当するようになり、前任者の授業プリントや他の科目の授業プリントを拝見することになりました。とても頑張ってプリントを作っておられることはわかるのですが、授業で空欄補充プリントをどう使うか、よく考える必要があります。

★いわゆる進学校では、「世界史」も「日本史」も、穴埋めでどんどん暗記させていく授業が普通なのでしょう。再三述べてきましたが、それでは、やせ細った学力しか身につきません。高校生に求められているのは、語句や人名の暗記力だけでなく、問題意識を持ってテキスト(教科書・資料)の文章を読む力だと、あらためて感じています。テキストを読む力をベースに、歴史を多面的に理解できるようにするのが、教師側の授業力です。

★私は教科書至上主義をとっているわけではありません。歴史を多面的に理解できるよう、私もテキストを補完するプリントを作成しています。本ブログではまだ紹介していませんが、太陰暦の図解からキング牧師の演説まで、内容はさまざまです。授業でどう使うのか想像しにくいと思いますが、「アメイジング・グレイス」や「アロハ・オエ」の歌詞・楽譜も含まれています。

★高校生に向けて書いた【世界史の学びかた】では、7項目をあげました。

 1 「過去と私たちのつながり」を知る楽しみを持ちましょう。
 2 ヴィジュアル資料でイメージを持ちましょう。
 3 一定のストーリーの中で、時期や人名・重要語句を覚えましょう。
 4 「どこで?」と考えたら、地図で確認しましょう。
 5 異なる地域・国・民族同士の<関係>に注目しましょう。
 6 事象と事象のつながりを発見しましょう。
 7 文化を時代全体の動きの中で理解しましょう。

 問題は、このようなことが可能となる授業を、私たちが展開できるかどうかです。特に1・6・7のためには、教える側の意識的な努力と工夫が必要です。

★7の「文化と時代全体の動き」ですが、「世界史」でも「日本史」でも、文化史は相変わらず軽く扱われているようです。人名と作品名の暗記に傾斜しています。いつまで、こういう授業が続くのでしょうか? 人間の営みである歴史は、複雑で総合的なものです。文化史が単独で存在しているわけではありません。文化をその時代全体の中に位置づけることにこそ、歴史を教える醍醐味があります。

★世界史の総合性をきちんと認識すれば、他の科目・他の教科との関連もいっそう見えてきます。遠からず、日本史や倫理との関連は、さらに重視されるようになるでしょう。また、英語や現代文との関連も意識される時代が来るのではないかと思います。


【世界史の授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】