その他

★新科目「歴史総合」・その課題を考える

【はじめに】◇まだ次期学習指導要領は発表されていませんが、2022年度からの新必修科目「歴史総合」は、現行の「世界史A」と「日本史A」を統合した科目になるとされています。世界史・日本史という枠を越えた、総合的な近現代史の科目の設置は、高校の歴史…

♥ブログを読んでいただき、ありがとうございます

◆ブログ「世界史の扉をあけると」を書き始めて、ちょうど3年半になります。今日、ページビューが180000を越えました。当初はほとんど読まれなかったことを考えると、信じられないような気持ちです。ブログを読んでいただいた方々に、心から感謝したい…

【2016センター試験・世界史Bの出題について】

過去3年と同様、「傾向と対策」的な分析は予備校などにおまかせし、世界史教育の改善という観点からいくつか感想を述べたいと思います。1 グラフの読み取り問題について[解答番号12] この出題を見て、少し救われたような思いがしました。グラフの読み取…

★単純化で見えなくなるもの【朝日新聞「歴試学のススメ・世界史編」について】

◆津野田興一さん執筆の「歴試学のススメ・世界史篇」については、以前にも取り上げました。ただ、毎回感じることがありますので、簡単に述べておきたいと思います。◆問題点は二つあります。一つ目は、歴史の流れの単純化です。他の史実や他の視点を捨象して…

▲【世界史教育のいま −問われる教科書・研究者−(シンポジウムで見えたもの)】

★2015年3月4日に立教大学で「公開シンポジウム 高校世界史教科書記述・再考 研究者の視点から」が開催され、参加してきました。私の「参考資料」(本ブログの一部)の配布を快く承諾してくださった主催者に、感謝申し上げます。参加者は50人余りでした。 ★…

【2015センター試験「世界史B」・問題分析】

《2013年・2014年に引き続き、「世界史B」の問題の分析を行います。今までと同じく、「傾向と対策」的な分析は大手予備校などにおまかせし、高校における世界史教育の充実という観点から述べたいと思います。したがって、試験問題としての良し悪しを評価す…

▸【『市民のための世界史』の書評に対する桃木至朗さんの反論について】

■桃木至朗(ダオ・チーラン)さんが、ブログで 私の書評について反論していました [2014‐08‐29]。「かみ合わない議論」の一つの典型のように思われましたので、あえて感想を書かせていただきます。■執筆者の代表がわざわざコメントしてくださったのですが、…

【世界史の授業を考える(その3)】

★予備校の「世界史B」の授業の他に、9月からある高校の「倫理」の授業を、そして10月からは地域の大人のかた向けの世界史講座も担当しているため、新しい記事を書く時間がなかなかとれなくなっています。★リリーフで受験向けの「倫理」を担当するようにな…

▶書評【大阪大学歴史教育研究会編『市民のための世界史』】

☆世界史教育充実のための大阪大学歴史教育研究会の活動は、めざましいものがあります。その活動の現時点での集大成とも言うべきものが本書です。大学教養課程のテキストとして書かれました。帯には次のような言葉が並んでいて、本書の意図を伝えています。 …

◆<世界史ブックガイド>と授業

◆本ブログのサブタイトルは<文化と社会の交点から見えてくる歴史>ですが、私は「文化・政治・経済の複雑な絡み合いをトータルに考える授業」を目指してきました。とても到達できそうにない目標なのですが、他のページでも述べましたように、さまざまな補助…

♥世界史の学びかた<高校生のみなさんへ>♥

■世界史は内容が豊富ですから、重要語句・人名の丸暗記ではいきづまります。では、どうすればいいでしょうか? ■「覚えなければ」という気持ちが先立ってしまうかも知れませんが、まずは「理解しよう」という気持ちになってみてください。「理解して、世界史…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その3>】

◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の3回目です。《Ⅲ.年間の授業内容(後半)です。全体として第Ⅱ部では、人間社会の発展とその中の負の歴史(インディオ人口の激減、奴隷貿易、ジャコバン派の独裁、植民地化など)を同時に見る目を養おうとしました。…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その2>】

◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の2回目です。《Ⅱ.年間の授業内容(前半)です。古代史を重視した、ちょっと変わった世界史Aです。》※参考までに、本村凌二氏の言葉を紹介しておきます。「古代や先史時代にまで目を向けなければ、壮大な人類史の流…

【世界史A・こんな授業をしてみました<その1>】

★2013年度に実施した世界史Aの授業を3回にわたって紹介します。★「どんな考え方に基づき、どんな工夫がされたか」という観点で、お読みください。3回の内容は、次の通りです。 <その1> 授業の方針 <その2> 年間の授業内容(前半) <その3> 年間…

【2014センター試験分析・問題点の多い「世界史B」】

《はじめに》★センター試験の出題内容は、高校教育の現場に大きな影響を与えます。その意味では、常に良問が求められるわけですが、今回はどうだったでしょうか。★「傾向と対策」的な分析は予備校等に譲り、ここでは、出題内容・形式が「世界史教育に資する…

【◆復習プリントと世界史Bの授業づくり(復習プリントの公開にあたって)】

私の場合、復習は既成の空欄補充問題(集)を使ってきました。しかし、既成の空欄補充問題(集)では、どうしても不満が残り、私の授業展開と連動した(同時に大学受験に役立つ)復習プリントを作成する必要が生じました。 復習プリントは、テーマごとに4部…

【世界史の授業を考える・その2(ミニ授業を公開しながら思うこと)】

■授業を再現するということは難しいものです。公開を始める前に恐れていたのですが、やはり「こんな授業をやってます!」というような感じになってしまいました。授業用のノートと記憶に頼って再現していますので、美化が行われているのは確かです。■どうし…

【★世界史の授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】

<はじめに>■本ブログは、日々の世界史の授業から出発し、さまざまなテーマで世界史を考えながら、日々の授業に戻っていくというスタイルをとっています。■各テーマ史のややカタい内容も、その多くは授業と関わったものです。直接授業に取り入れた内容も、…

▶書評 【柄谷行人『哲学の起源』(その2)】

<通説との接ぎ木> ■序章では、前6世紀〜前5世紀に関する、通説的な倫理思想史(たとえばヤスパースの「世界史の基軸時代」が思い出される)が紹介され、それに柄谷の交換様式説が接ぎ木されている。倫理思想史そのものはやや古めかしく平板で、新しい視…

▶書評 【柄谷行人『哲学の起源』(その1)】

■哲学の始まりを叙述した書物はあまたあるが、哲学の起源を探求した書物は少ない。その探求には、たいへんな力が必要とされる。それを、柄谷は行おうとした。■哲学への希求は、すべての人の心にある。その意味では、『哲学の起源』は、人々の関心の根底に触…

 【2013センター試験問題「世界史B」について】

■センター試験問題の内容は,、高校教育の現場に大きな影響を与える。その意味では常に良問が求められるのだが、今回はどうだっただろうか。「傾向と対策」的な分析は予備校等で詳細になされると思うので、ここでは「世界史教育のありかた」に関連して、いく…

世界史B教科書の記述を比較してみると10 【南京事件 および まとめ】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【「日中戦争における南京虐殺」の記述】 歴史認識に関わる、たいへんセンシティブなテーマですが、高校世界史で避けるて通ることはできません。あえて取り上げることにしました。政治的問題とは一…

世界史B教科書の記述を比較してみると9 【地図(宗教改革後の宗派分布)】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【地図(宗教改革後のヨーロッパの宗派分布)】 ■世界史教科書における地図は理解を深めるために極めて重要ですが、詳しく見ると、教科書によって少なからず違いがあることがわかます。「宗教改革後…

世界史B教科書の記述を比較してみると8 【イェニチェリ】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【「オスマン帝国のイェニチェリ」の記述】 ■世界史においてイスラーム世界の理解は極めて重要ですが、生徒たちにとってはイスラーム用語の理解は容易ではありません。イェニチェリを例に、簡単な比…

世界史B教科書の記述を比較してみると7 【聖母マリア信仰】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【聖母マリア信仰の記述】★誤解を避けるために、あらかじめお断りしておかなければなりませんが、このテーマを取り上げるのは、信仰の立場からではありません。「あるべき世界史教科書」という観点…

世界史B教科書の記述を比較してみると6 【20世紀の文化】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【「20世紀の文化」の位置づけ・内容】 「20世紀の文化」はまさに私たちの中に生きており、それをきちんと対象化することは極めて重要です。しかし、高校「世界史」の中では、多くの場合(教科書で…

世界史B教科書の記述を比較してみると5 【19世紀の欧米文化】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【「19世紀欧米文化」の位置づけ・内容】■19世紀の欧米文化は現代への影響が大きく、たいへん重要です。実際の授業でも、きちんと取り上げたいものです。(たとえば、ドストエフスキーなどの名前す…

世界史B教科書の記述を比較してみると4 【ジェンダー】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【ジェンダー】 ■現在の歴史研究では、「ジェンダー視点」抜きに歴史を語ったり叙述したりすることはできないでしょう。近年のジェンダー研究の成果が高校の世界史教科書にどのように表れているか、…

世界史B教科書の記述を比較してみると3 【トルコ人のイスラーム化】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【「トルコ人のイスラーム化」の位置づけ・記述のしかた】■世界史の授業において、どのようなコンテクストで「トルコ人のイスラーム化」や「トルキスタンの成立」を取り上げるかは、重要な課題とな…

世界史B教科書の記述を比較してみると2 【12世紀頃までの東南アジア】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】【12世紀頃までの東南アジア】 ■授業での東南アジアの取り上げ方は、難しいものがあります。各教科書も、東南アジアの取り上げ方には、かなりの違いが見られます。諸島部のイスラーム化が始まる前ま…