世界史B教科書の記述を比較してみると2 【12世紀頃までの東南アジア】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】

【12世紀頃までの東南アジア】
■授業での東南アジアの取り上げ方は、難しいものがあります。各教科書も、東南アジアの取り上げ方には、かなりの違いが見られます。諸島部のイスラーム化が始まる前までの時期で比較してみました。

<山川>
現行版と同じように、古代インドの後におかれた「東南アジアの諸文明」で、ドンソン文化から陳朝まで叙述している。「インド化」で東南アジアの王権の特徴を述べているが、全体に簡潔な記述である。したがって、ドヴァーラヴァティや古マタラムなどについては触れていない。アンコール・ワットの写真を大きく載せており、やや過大な扱いかと思われる。
 「海域世界」については抑えた扱いで、第Ⅱ部のまとめで「諸地域世界の交流」という視点から取り上げているが、東南アジアについて詳しい記述はない。
 全体として、新課程版編集を機にもう少し充実させてほしかった。

<実教>
かなり充実しており、<山川>の倍のページ数が割かれている。第一次大交易時代以前は2カ所に分かれ、10世紀以降については元朝の後におかれている(「東南アジア世界の再編」)。流れは比較的スムーズである。コラム「東南アジアの王権」でその特色が述べられており、上座部仏教の広がりについても適切な記述をしている。三仏斉についてはジャーヴァカという表記をしている。
 ただ、残念ながら、「海域世界」や「大交易時代」における東南アジアの位置づけは、あまり明確ではない。また、「第1次大交易時代」・「第2次大交易時代」という用語が最適なものなのかどうか、判断に迷うところである。

<東書>
現行版から東南アジア史の充実が図られ、それを継承している。<山川>の3倍のページ数が割かれている。特に元朝の後におかれた「第11章 海域世界の発展」と、この章における東南アジアの取り上げ方は非常に優れている。東南アジアにページを割き過ぎているという批判もあるだろうが、高校教科書において東南アジア史を構造化するという難しい課題をクリアしている。
 アンコール・ワットの写真は3社の中で最も小さく、意外な扱いである。パガンの仏教遺跡の写真の方が大きいのは、執筆者の歴史観の表れなのだろうか?

世界史B教科書の記述を比較してみると3【トルコ人のイスラーム化】