2016-01-01から1年間の記事一覧

総合 【哲学? 混沌? プロタゴラス的な「折々のことば」(鷲田清一)】

★タレスが「万物の根源(アルケー)は水である」と語ってから、二千数百年。哲学は、ずっと世界の原理を明らかにしようとしてきたと思います。世界を貫いているロゴスを探求してきたと思います。★しかし、今、ロゴスとアルケーの探求を、哲学は科学に譲った…

総合 【 どう考えるべきか、「トランプ大統領」 】

◆アメリカ大統領選挙[2016/11/8]におけるトランプ勝利は、世界に大きな衝撃を与えました。◆世界史を学んできた者としてこの事態をどう受けとめればいいのか、いろいろ考えさせられました。◆これから述べるのは、結果判明から5日という時点での、暫定的な…

古代 南アジア【仏教を多角的にみる:シッダールタの生涯】

■今回載せるのは、現在、あるカルチャーセンターでおこなっている<歴史からみる仏教>(全6回)の1回目のレジュメです。■レジュメですので、流れがわかりにくいかもしれません。流れを理解しやすくするために、授業の意図などの解説(*がついている部分…

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(現代)【ハンガリー事件】

★1956年のハンガリー事件は、たいへん重要な出来事でした。この時のハンガリー政府の改革は、ソ連に鎮圧されたとは言え、1989年の東欧社会主義政権崩壊の先駆をなしました。それだけでなく、ハンガリー人にとっては、1848年のハンガリー革命を継承するもので…

近代 ヨーロッパ 【<フランス革命>の授業のために】

■戦後しばらくの間、フランス革命は、世界史の中で大きな位置を占めていました。多くの学者が、フランス革命を典型的な市民革命(ブルジョワ革命)と見ていたからです。現在からみれば、そこには、やはり「ヨーロッパ中心史観」があったと思われます。日本史…

総合 <文化史を豊かに> 【ルネサンス・バラ・庭園】

有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」には、白いバラが描かれています。絵の左半分、西風ゼフュロスが吹き起こす風の中に舞っているのが、バラです。 なぜ、バラが描かれたのでしょう? 香りの女王でもあったバラは、古代ギリシア以来、ヴィーナス(…

先史・古代 <人類の心の進化> 【花の栽培・花のデザイン】 

単純な事実ですが、私たちは、大人になっても、「マル」よりは「花マル」を好みます。それは、なぜなのでしょう? 人類はなぜ花を好むようになったのでしょうか? ネアンデルタール人は死者を埋葬して花を手向けたとも言われていますが、人類と花との関わり…

総合 【「イギリスのEU離脱」で思うこと】

◆昨日のイギリス国民投票の結果は、世界中に大きな衝撃を与えました。世界史の教員も、もう一度イギリスやEUについて再考しながら、授業を構成していかなければならないでしょう。◆イギリスやEUの専門家でもない私が今日の段階で言えることは限られてい…

古代 初期キリスト教 【アタナシウス派などの主張をどう教えるか】

◆初期キリスト教史は、必ずしも教えやすくないと思います。特に、次の2点をわかりやすく(しかし本質からそれずに)教えるのは、なかなか大変です。 ①『新約聖書』は、なぜギリシア語(コイネー)で書かれたのか。 [言い換えれば、ヘレニズムで取り上げる…

古代 メソポタミア【太陰暦・週7日制・六十進法】

☆太陰暦も週7日制も六十進法も、古代のメソポタミアで成立しました。これらについての世界史の教科書の記述は簡単ですし、通常は授業で詳しく触れる余裕もありません。しかし、歴史的には極めて重要なものばかりです。それぞれの成立過程を、できるだけわか…

<問いからつくる世界史の授業>(近世)【童話の誕生】

★近世ヨーロッパの社会と文化については、教科書・資料集でも、以前より大分取り上げられるようになりました。特に「18世紀啓蒙」については、「新世界史B」(山川)や「現代の世界史(A)」(山川)のように、力を入れた記述をしている教科書もあります。…

★書評:シリル・P・クタンセ『海から見た世界史』

「海洋国家の地政学」という副題を持つ本書は、2013年にフランスで出版されました。あまり年数をおかずに日本語版が出版されたのは、うれしいことです(大塚宏子訳、監修・樺山紘一)。 本書は、古代から現代までを、「海洋を舞台とした歴史」という視点から…

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(近世)【「名誉革命」、そしてアイルランド】

★17世紀の「イギリス史」の授業は、旧来のとらえ方(イングランド中心の「ピューリタン革命〜王政復古〜名誉革命」というリニアな史観)で行えば割合簡単ですが、新しい見方を盛り込もうとすると、かなりの工夫が必要です。★今回は詳述しませんが、まず「ブ…

★新科目「歴史総合」・その課題を考える

【はじめに】◇まだ次期学習指導要領は発表されていませんが、2022年度からの新必修科目「歴史総合」は、現行の「世界史A」と「日本史A」を統合した科目になるとされています。世界史・日本史という枠を越えた、総合的な近現代史の科目の設置は、高校の歴史…

★<新・映像の世紀第5集「若者たちの反乱」>について

◆2016年2月21日に、NHKテレビで放送されました。1950年代末、60年代後半、80年代末に焦点を当てた構成でした。◆制作者は「若者たちの反乱」という視点から20世紀後半の歴史を描こうとしたのでしょう。第3集については詳しく分析しましたが、今回は最小限の…

♥ブログを読んでいただき、ありがとうございます

◆ブログ「世界史の扉をあけると」を書き始めて、ちょうど3年半になります。今日、ページビューが180000を越えました。当初はほとんど読まれなかったことを考えると、信じられないような気持ちです。ブログを読んでいただいた方々に、心から感謝したい…

<問いからつくる世界史の授業>(総合)【反ユダヤ主義と作曲家】

★ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺で頂点に達した反ユダヤ主義。今回は、反ユダヤ主義についての授業の試みです。シリーズ<問いからつくる世界史の授業>の他のテーマと同じく、授業は<オリジナル問題と解説(■の印がついた部分)>で構成します。★反ユダヤ主…

♥世界史ブックガイド⑭[文化と社会]【金谷治『孟子』】

最近は新刊書の案内をしてきましたが、今回は半世紀前に出版された本です。 特に古い本を取り上げようという気持ちはなかったのですが、孟子について調べていて、興味深いことがわかりました。それは、近年、孟子についての本はほとんど出ていないという事実…

【2016センター試験・世界史Bの出題について】

過去3年と同様、「傾向と対策」的な分析は予備校などにおまかせし、世界史教育の改善という観点からいくつか感想を述べたいと思います。1 グラフの読み取り問題について[解答番号12] この出題を見て、少し救われたような思いがしました。グラフの読み取…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑬【保苅瑞穂『モンテーニュ よく生き、よく死ぬために』

「モンテーニュは有名だけど過去の思想家、現代とは関係ない」と、ほとんどの人が思っているでしょう。「ギリシア・ローマの古典に通暁した、ちょっと保守的な教養人」というイメージもつきまといます。それに、『エセー』を読むのはかなり大変です。 私も、…