★<新・映像の世紀第5集「若者たちの反乱」>について

◆2016年2月21日に、NHKテレビで放送されました。1950年代末、60年代後半、80年代末に焦点を当てた構成でした。

◆制作者は「若者たちの反乱」という視点から20世紀後半の歴史を描こうとしたのでしょう。第3集については詳しく分析しましたが、今回は最小限のコメントにとどめたいと思います。

◆シリーズ全体が社会主義を否定的にとらえていますが、今回、ゲバラはたいへん好意的に取り上げられていました。たとえば、第1集のレーニンとは全く違った描き方だったと思います。この違いをどう受けとめればいいのか、ちょっと悩んでしまいました。

◆「プラハの春」とソ連軍による弾圧の様子は、よく伝えられていたと思います。しかし、「プラハの春」を「若者たちの反乱」というコンテクストで描くのは、問題があります。ほんとうは、ソ連・東欧社会主義圏の歴史をもう少し掘り下げなければなりません。

デヴィッド・ボウイのコンサートが西ベルリンの壁近くで開かれた時の様子は、臨場感がありました。この時の東ベルリンの若者たちの映像は、初めて見ました。現代史の貴重な1コマだったと思います。ただ、「プラハの春」と同じく、「ベルリンの壁の崩壊」を「若者たちの反乱」というコンテクストで取り上げることには無理があります。

◆中国については、文化大革命と89年の天安門事件を取り上げていました。天安門事件の映像では、指導者・柴玲の言葉も流されていて、たいへんよかったと思います。

◆60年代後半の日本の「若者たちの反乱」をどう取り上げるのか、関心を持って見ていました。しかし、ベトナム反戦運動と「新宿騒乱事件」を短く取り上げただけでした。なぜ後者を取り上げたのか、疑問です。「大学紛争」や「全共闘運動」には、なぜか全く触れていませんでした。コロンビア大学の映像はあったのですが、東大や日大の映像はありませんでした。

◆60年代後半からアメリカで始まり、各国に広がった「ウーマン・リブ」(フェミニズムの第2波)は、無視されていました。この点では、<新>と銘打ったシリーズにふさわしい内容とは言えなかったと思います。

◆細かいことですが、史実の誤認が一つありましたので、述べておきます。ベトナム戦争に関して「1975年のサイゴン陥落でアメリカが敗北した」と述べていましたが、アメリカ軍は1973年にベトナムから撤退しています。敗北は、その時点です。

<新・映像の世紀第3集「時代は独裁者を求めた」>が伝えたこと・伝えなかったこと