2015-01-01から1年間の記事一覧

★<新・映像の世紀 第3集「時代は独裁者を求めた」>が伝えたこと・伝えなかったこと

■第3集<時代は独裁者を求めた>が、昨日NHKで放送されました。映像で見る20世紀前半の歴史は迫力がありましたが、現代史のドキュメンタリー番組制作の難しさをあらためて感じさせられました。当然のことですが、私たちが見るのは編集された映像です。番組…

<問いからつくる世界史の授業>(現代)【メキシコ壁画運動】

★今までの授業では、独立後のラテンアメリカの歴史については、メキシコ革命やキューバ革命を除き、あまり取り上げられてこなかったと思います。まして、文化には目が届いていなかったのではないでしょうか。★山川の新課程教科書『詳説世界史B』・『新世界…

★単純化で見えなくなるもの【朝日新聞「歴試学のススメ・世界史編」について】

◆津野田興一さん執筆の「歴試学のススメ・世界史篇」については、以前にも取り上げました。ただ、毎回感じることがありますので、簡単に述べておきたいと思います。◆問題点は二つあります。一つ目は、歴史の流れの単純化です。他の史実や他の視点を捨象して…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑫【ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』】

両親の言葉であるベンガル語の中で幼少期を過ごしながら、アメリカで英語によって自己形成し、著名な作家となったジュンパ・ラヒリ。彼女が、イタリア語に惹かれてイタリアに移住し、習得したイタリア語で書いたのが、本書です。21のエッセイと2つの短編小…

<問いからつくる世界史の授業>(古代)【イエスのことば・聖書の言語】

★当然のことではありますが、キリスト教の成立は、世界史においてたいへん重要なテーマです。授業では、歴史としてキリスト教の成立を教える以上、新約聖書学の成果を踏まえなければならないでしょう。具体的には、次のプロセスをきちんとたどる授業を行うこ…

<問いからつくる世界史の授業>(現代)【クルド人問題】

★100年前の第一次世界大戦の結果、オスマン帝国は滅亡し[1922]、2度の条約締結を経て[セーヴル条約(1920)→ローザンヌ条約(1923)]、トルコ共和国の成立が国際的に認められました。ムスタファ・ケマルの強力なリーダーシップのもと、半植民地化の圧力…

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(現代)【ロシア革命の困難】

★まもなく、ロシア革命(1917)から100年になります。ゴルバチョフのペレストロイカからソ連邦消滅(1991)という出来事以降、ロシア革命をより客観的に振り返ることができるようになっていると思います。★今回も、通常の高校世界史では使われない資料に基づ…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑪【金沢百枝『ロマネスク美術革命』】

最新のロマネスク美術概説書です。巧みな構成で(たとえば「はじめに」から第一章にかけては導入部として見事です)、読者をロマネスク美術へと誘ってくれます。内容は高度ですが、叙述は難解ではありません。図版は豊富です。 全体の構成は次の通りです。 …

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(近代)【エミリー・ブロンテは祈り、闘った】

★世界史でもジェンダーやフェミニズムという語が使用されるようになっています。ただ、教科書の記述が不十分な中で、授業ではどのようにアプローチすればいいのか、模索が続いてきました。★当然のことながら、女性参政権実現の経過についてはすべての教科書…

<問いからつくる世界史の授業>(近代〜現代)【アイルランドとアメリカ合衆国】

★世界史を教えていると、常に歴史意識が問われることになります。ひいては、現在の自分の政治的・社会的意識も問われることになりますので、なかなかたいへんです。世界史の中には自分が問われるリトマス試験紙のようなものが数限りなくある、という感じです…

<問いからつくる世界史の授業>(総合)【ハート記号はいつから?】

★あえて繰り返しますが、政治的な事件や戦争、政治制度や経済システムの変遷だけが歴史ではありません。民族や宗教や思想などを加えても、まだ十分とは言えないでしょう。世界史をよく理解するためには(人びとの営みとして世界史を理解するためには)、身近…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑩【ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』】

★「フェミニズム批評の古典」と言われる本の新訳が出ました(片山亜紀訳)。★原著の出版は1929年でしたが、前年の講演をもとにしています。1928年は、イギリスにおいて、21歳以上の男女が平等に選挙権を持つようになった年でした。そのような時代の中で、ウ…

<問いからつくる世界史の授業>(近世)【ザビエル②[ザビエルの見た日本]】

★ザビエルという、歴史上たいへんポピュラーな人物に関する問題の2回目です。★このような人物の場合、簡単な確認をして済ますことはできます。ただ、授業内容や発問の更新を常に心がけていれば、それでは済まなくなります。少し調べ直してみるだけで、重要…

<問いからつくる世界史・歴史総合の授業>(近代〜現代)【明治以降の日本人移民 −ハワイ・カリフォルニア・ブラジル−】

★現在の歴史教育においては、世界史においても日本史においても、「世界史の中の日本」という視点が欠かせないものとなっています。今回は、「世界史の中の日本」を、国境を越えた人の移動から考える授業です。★18世紀末以降から現代までの「国民国家」の時…

<問いからつくる世界史の授業>(近世)【アメリカ大陸原産の作物・花】

★今年、『ヨーロッパの歴史Ⅱ −植物からみるヨーロッパの歴史−』という本が出版されました[草光俊雄・菅靖子著、放送大学教育振興会]。たいへん興味深い内容で、博物学や庭園の歴史がよくわかります。★しかし、近年変わってきたとは言え、世界史教育におけ…

★戦後70年の年に読む「ポツダム宣言」・「降伏文書」

◆コンパクトな史料集として、『「ポツダム宣言」を読んだことがありますか?』が出版されました。恥ずかしいことですが、本書で、初めて「ポツダム宣言」や「降伏文書」をきちんと読みました。◆本書には、「ポツダム宣言」と「降伏文書」、さらに「カイロ宣…

<問いからつくる世界史・歴史総合の授業>(近代)【ペリー来航③[アメリカ大統領の国書]】

★ペリー来航に関する問題の3問目です。今回は4択の問題ではありません。★1回目来航時のペリーの最大の目的は、開港を求める大統領フィルモアの国書を幕府に渡すことでした。その際、国書の言語と通訳をどうするかは、重要な問題でした。★ペリー一行と幕府…

<問いからつくる世界史・歴史総合の授業>(近代)【ペリー来航②[浦賀に来航する前]】

★ペリー来航に関するオリジナル問題の2問目です。なお前回の問題1から次回の問題3は、時系列に沿って並べています。★授業は<問題+解説(◆の部分)>で構成します。生徒たちの状況によっては、浦賀が現在の神奈川県横須賀市であることを確認した方がいい…

<問いからつくる世界史・歴史総合の授業>(近代)【ペリー来航①[軍人ペリー]】

★1853年(嘉永六年)7月(陰暦6月)のペリー来航と翌年2月(陰暦1月)の再来航については、授業の中でできるだけ時間を割く努力を続けてきました。日本の歴史にとって重要であるばかりでなく、アメリカの東アジア〜太平洋進出という点でも重要だからです…

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑨【坂部恵『ヨーロッパ精神史入門』】

★実は、「入門書」ではありません。講義調で書かれていますので多少読みやすくはなっているものの、かなり高度な内容です。カロリング・ルネサンスから現代までのヨーロッパ哲学・文学の根底を流れているものについて、縦横無尽に述べられています。ほとんど…

<問いからつくる世界史の授業>(近世〜現代)【ウルドゥー語を考える】

★ある文化と他の文化の交流・融合は、世界史のたいへん重要な要素です。ただ、交流・融合の中からできた言語について教えるのは、簡単ではありません。★たとえばウルドゥー語はパキスタンの公用語ですが、北インドの言語にペルシア語、アラビア語の語彙が多…

<問いからつくる世界史の授業>(近世)【ザビエル①[ザビエルの大航海]】

★あまりにもよく知られた人物について取り上げます。ザビエルについて、あるいはザビエルと日本について、より深く知ることを目的としたオリジナル問題を、2回にわたり紹介してみます。★今回の問題は、比較的解きやすいように作問してあります。ただ、難し…

<問いからつくる世界史の授業[資料]>(近世)【デカルトが住んだ国】

★歴史は総合的なものです。本来豊かである文化史を単に暗記させるような授業は避けなければなりません。文化を時代全体の動きの中に位置づけることが大切ですが、今回はそのためのオリジナル問題です。★「考える世界史」の近づけるため、資料を使った問題に…

<問いからつくる世界史の授業>(近世〜近代)【奴隷貿易の中から生まれた歌】

★世界史の中で、音楽は軽い(不当なと言うべきでしょうか)扱いを受けています。通常、17〜19世紀のクラシック音楽の作曲家たちにちょっと触れただけで終わってしまうでしょう。このことは、多分、世界史のありかたの根本的なところに関わっていると思います…

★津野田興一「アケメネス朝ペルシャの言語」(朝日新聞)への疑問

★「朝日新聞」(2015年5月28日付)に掲載された「歴試学のススメ(世界史編)・アケメネス朝ペルシャの言語」は、大学入試問題で歴史を学ぶというシリーズで、なかなか面白いものでした。しかし、疑問も感じました。入試問題の解答例は許容範囲に入ると思い…

<問いからつくる世界史の授業>(古代〜中世)【諸勢力・諸文化が交錯するシリア】

★内戦が続いているシリア(・アラブ共和国)が注目を集めていますが、前回の【ベーメン】に引き続き、生徒たちが理解しづらい地方を取り上げます。★生徒たちは、アラム人、ダマスクスとあげれば、古代におけるシリアの重要性を思い出します。しかし、その後…

<問いからつくる世界史の授業>(中世〜現代)【ベーメンってどこ?】

★今回は、生徒たちが理解しづらい地方を取り上げます。残念ながら、地理的関心が薄いいまま世界史を学んでいる生徒たちも、少なくありません。いままで、ベーメンという地方をよく理解できないまま受験に臨んだ生徒たちも、少なからずいたのではないでしょう…

<問いからつくる世界史の授業>(中世)【ジャンヌ・ダルク】

★世界史では、「生徒たちの関心は高いけれど、授業で詳しく取り上げるのは難しい」という人物がたくさんいます。ジャンヌ・ダルクもその一人です。今回は、そのギャップを埋めるためのオリジナル問題です。解説(◆の部分)のしかたにもよりますが、授業の中…

<問いからつくる世界史の授業>(中世)【正統カリフ時代】

★正統カリフ時代(632年〜661年の30年間)は、イスラームの発展にとって極めて大事な期間です。しかし、通常の授業ではあまり時間をとれず、アリーの暗殺に焦点がいきがちです。今回は、そのような傾向を補正するための問題と解説です。 [問題自体は、一応 …

<問いからつくる世界史の授業>(近代)【ナポレオンの妃ジョゼフィーヌと博物学】

☆今回取り上げるのは、ナポレオン1世の妃だったジョゼフィーヌです。ダヴィドの巨大な絵画(「ナポレオンの戴冠式」)に描かれ、のち離婚されたジョゼフィーヌ。多分、授業ではマリ=アントワネットほどには取り上げられないことでしょう。しかし、彼女を取…