<問いからつくる世界史の授業>(近世)【ザビエル②[ザビエルの見た日本]】
★ザビエルという、歴史上たいへんポピュラーな人物に関する問題の2回目です。
★このような人物の場合、簡単な確認をして済ますことはできます。ただ、授業内容や発問の更新を常に心がけていれば、それでは済まなくなります。少し調べ直してみるだけで、重要な事実や意外な事実を発見できることがあります。生徒たちも、有名な人物に関する歴史を新たな角度から見ることができれば、世界史にさらに関心を持つでしょう。
★今回のオリジナル問題も、実際の授業では、考える時間や話し合う時間をとっています。「考える世界史」や「話し合う世界史の授業」の試みです。いわゆる、世界史と日本史の融合問題です。
☆問題☆ [プラスα]
ザビエルは2年余り日本に滞在し、キリスト教(カトリック)を布教した。その中でザビエルは、日本人をどう見ていただろうか。適切なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
① 知識欲に富み、議論を好む。
② 善良でおとなしく、議論は好まない。
③ 知識欲はあるが、キリスト教には関心がない。
④ 知識欲に乏しく、西洋人に近づかない。
◇考える時間をとった後、①から順に手を挙げてもらうと、ほとんどの場合、②が多くなります。最初私はこの結果に驚いたのですが、のちには納得するようになりました。生徒たちは、「周りの様子を見ながらおとなしくしていて、自分の意見を言うのを控える」という自分たちの傾向から、判断しているのでしょう。
◆正解は、①です。正解を伝えると、生徒たちは「意外だ」という顔をします。生徒たちには、ザビエルの頃も、ペリーがやって来た時も、庶民を含めて日本人は好奇心旺盛だったことを話しています。また、自分の意見をきちんと話せることが、これからの時代には「絶対必要だからね」と話しています。
◆正解を伝えた後は、プリントで「ザビエルの日本人観」を確認してもらっています。読んでもらうのは、ザビエルの書簡の一部です。(*)
◆なお、同じプリントには、よく知られたザビエルの肖像画を印刷しています。肖像画の図像学的な解釈を紹介するためです。(**)
(*)ザビエルの書簡は、村井章介『世界史のなかの戦国日本』[ちくま学芸文庫]に載っているものを使わせていただいています。この本は、最初『海から見た戦国日本 −列島史から世界史へ−』というタイトルで、ちくま新書から出ていました。私はちくま新書で読み(こちらのタイトルの方が好きですが)、たくさんのことを学びました。歴史書の見本とも言うべき、すばらしい本です。
(**)ザビエルの肖像画の図像学的な解釈を、次のページで紹介しています。➡ 【ハート記号はいつから?】 および 【心臓・魂・ハート形】
➡ <問いからつくる世界史の授業>【ザビエル①(ザビエルの旅)】
➡ こんな考え方で書いていきます【<問いからつくる世界史の授業>について】