2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

近代 ヨーロッパ 【自由の女神 −フランス革命〜ドラクロワ−】

◆「民衆を導く自由の女神」は、フランスを代表する絵画である。ロマン派の旗手ドラクロワが、1830年の七月革命を題材に、その年のうちに描いた。七月革命では、反動的なシャルル10世のブルボン復古王政が倒れ、ルイ=フィリップの立憲王政が成立した。しかし…

近世 ヨーロッパ 【旅するデカルト】

◆フランス人デカルト(1596〜1650)は、名門ラ・フレーシュ学院(イエズス会が設立)で10歳から18歳まで学んだ。1610年アンリ4世が狂信的旧教徒に暗殺されると(16世紀後半のユグノー戦争の余燼はまだくすぶっていた)、遺言により、アンリ4世の心臓はラ・…

近世 東アジア 【王安石の情熱】

★新法で有名な、北宋の政治家・王安石。改革を開始する約10年前皇帝・仁宗に提出した「万言書」は、古来名文と言われてきた(王安石は唐宋八大家に数えられる)。そこには、37歳の官僚の、改革へのまっすぐな情熱が表れていた。「これが1000年前の文章か」「…

中世 中央アジア・西アジア 【ティムールが、シリアで出会ったのは】

■14世紀末から15世紀初めにかけて、中央アジアのサマルカンドを都とするティムール帝国は、驚くべき勢いで支配地域を拡大した。その領域は、東はトルキスタン東部・インド北西部から、西はイラン・メソポタミア・小アジア東部にまで及んだ。トルコ語を話すモ…

現代 ヨーロッパ 【マヤコフスキイの希望は、打ち砕かれた】

■ロシア十月革命(1917)以降のロシア、ソヴィエト連邦を、政治革命の枠を超えた芸術・文化の革命の場と考えた人々がいた。この人々が創り出した潮流を「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ぶ。その一人に、詩人のマヤコフスキイがいた。1918年、マヤコフスキイ…

中世 西アジア 【イスラーム教の誕生】

★ユダヤ教やキリスト教がすでに歴史を刻んでいた中で、イスラーム教が誕生する必然性は、どこにあったのか? ムハンマドはマッカ(メッカ)の商人であった。マッカやマディーナ(メディナ)を含むヒジャーズ地方は、6世紀から交易ルートとして活況を呈する…

古代 地中海世界 【イエスは、アラム語で民衆に語りかけた】

■『新約聖書』の配列とは違い、四福音書のなかで最も早く成立したのは「マルコによる福音書」であったが(60年代に書かれたと言われる)、福音書記者マルコはイエスの最後の言葉を次のように記している。『イエスは大声で叫ばれた。「エロイ、エロイ、レマ、…

中世 東アフリカ 【スワヒリ世界ができた】

■現在タンザニアやケニアではスワヒリ語が公用語となっている。スワヒリ語は、現地のバントゥー語とアラビア語が混じり合ってできた。アラビア語がどうして東アフリカに伝わったのか? 7・8世紀以降のイスラーム世界の急速な拡大は、交易活動の活発化や人…

古代 南アジア 【ゼロの発見】

■ゼロの概念をともなう十進法表記は、5世紀頃、グプタ朝期のインドで成立した。ゼロは、●または○で表された。ゼロを数字の一つとして考えたこと、ここに認識上の革命があった。 6世紀の天文学書にはゼロの足し算・引き算の例が記載されている。また、数学…

近世 ラテンアメリカ 【ジャマイカの苦難】

★ジャマイカは、日本ではレゲエやコーヒー豆ブルーマウンテンで知られてきたが、かつてイギリスの植民地であった(1670〜1962)。2012年ロンドン・オリンピックにおける、ウサイン=ボルトの3冠は、ジャマイカの人々やイギリスにいる60万人のブラック・カリ…

その他 【時代区分について】

○世界の諸地域の歴史を単一の尺度で区分することは、困難である。また歴史の見方そのものと密接に関連しているため、諸説がある。したがって、ここでの時代区分は便宜的な部分を数多く含んでいる。異論はたくさんあると思われる。○中国史を中心とした東アジ…

中世 東アジア 【北魏・孝文帝の漢化政策】

■農耕民ではない民族が、華北の農耕地帯に侵入するだけでなく、これを支配するようになった時、どのように農耕民(漢人)を統治すればいいのか。騎馬遊牧民の鮮卑が建てた北魏の100年近い華北支配(439〜534)は、その最初の本格的試みであった。 北魏は孝文…

現代 【ロンドンの夏目漱石と「開化」】

■1901年2月、夏目金之助(漱石)は、ロンドンの街でヴィクトリア女王の葬列を目撃していた。新しい世紀が始まった年の1月、ヴィクトリア女王が死去した。それはパックス=ブリタニカの終焉を象徴する出来事であったが、この時夏目はイギリス留学中だったの…

中世 ヨーロッパ 【ノルマン・コンクェストと「イギリス史」】

◆ノルマン・コンクェスト(1066)とは、ノルマンディー公ギヨーム(フランス語名)がイングランドを軍事的に征服した出来事である。ギヨームは、イングランドでは、ウィリアム1世としてノルマン朝(〜1154)を創始した。ただ、ノルマンとフランスとイングラン…

総合 地中海世界・ヨーロッパ 【キリストは神か人か、そして聖母マリアは】

■エフェソスは、エーゲ海東岸のギリシア人(イオニア人)の都市で、前11世紀頃からアルテミス神殿を中心に発展した。神殿の規模は、アテネのパルテノン神殿をしのぐものだったという。アルテミスは、通常ギリシア神話では狩猟と月の女神とされるが、もともと…

総合 ヨーロッパ・アメリカ 【「アメイジング・グレイス」が生まれた】

★たくさんの人々に歌い継がれてきた「アメイジング・グレイス(すばらしい、神の恵み)」。辛い歴史が、この歌を生んだ。 作詞者のジョン・ニュートンは、イギリス国教会の牧師であった。1770年代、まだ牧師としての修行を積んでいる時、屋根裏の小さな一室…

近代 ヨーロッパ 【ワルシャワのマリヤ・スクウォドフスカ】

★1878年、ポーランドはロシア支配下にあった。ワルシャワの学校で、10歳のマリヤ・スクウォドフスカが、視学官からロシア語で(ポーランド語ではなく)質問されていた。「われわれを統治したもう方は?」マリヤは、少しためらったあと、ロシア語で答えた。「…

現代 オセアニア 【ハワイ王国の滅亡】

★クック来航(1778)から約30年後の1810年、カメハメハ大王がハワイ諸島を統一し、ハワイ王国が成立した。 その後、アメリカ人企業家・宣教師を中心に、白人の移住者が増加した。しかし、その際持ち込まれた伝染病により、ハワイ先住民の人口は、クック来航…

中世 ヨーロッパ 【バイリンガルだったカール大帝】

◆カール大帝は、フランク王国最盛期の王で、いわゆる「カールの戴冠」(800.12.25)で有名である。カール大帝はドイツ語に基づく言い方で、日本ではこの呼称が一般化した。フランス語形のシャルルマーニュも使われるが、これはラテン語のカルロス=マグヌス…

古代 東アジア 【秦・前漢を苦しめた匈奴】

■匈奴は、前3世紀から、ユーラシア草原東部で強勢を誇った騎馬遊牧民。また、その国家を指す。最初の騎馬遊牧国家スキタイ(黒海北岸、ヘロドトスが『歴史』で記述した)の影響を受けた。モンゴル語やトルコ語の元になった言語を使っていたという。原音は「…

古代 西アジア 【ゾロアスター教】

■イランで生まれたゾロアスター教は、世界で最も古い宗教の一つである。教祖は、前12世紀頃のゾロアスター(正しくは、ザラトゥシュトゥラ)。火を崇拝するので、拝火教とも呼ばれる。前12世紀は、イラン高原が青銅器時代から鉄器時代に移行した、大きな文化的…

近世 ヨーロッパ 【ガリレオ・ガリレイという名前】

★ガリレオ・ガリレイは、不思議な名前だ。名と姓がほとんど同じである。アルファベットで書くと、Galileo Galilei となり、一字しか違わない。これはイタリアのトスカーナ地方の習慣で、姓と同じような名をつけたという。 さらに興味深いのは、ガリレイとい…

先史 【芸術活動が始まった】

■新人の洞穴絵画として、フランスのラスコーやスペインのアルタミラが有名である(2万年前?)。新人の段階で(多分3〜4万年前から)、人類は美術という活動を開始した。野生動物は狩猟の対象ではあったが、彼らは畏敬の念を持って野生動物を描いたにちが…