古代 西アジア 【ゾロアスター教】

■イランで生まれたゾロアスター教は、世界で最も古い宗教の一つである。教祖は、前12世紀頃のゾロアスター(正しくは、ザラトゥシュトゥラ)。火を崇拝するので、拝火教とも呼ばれる。前12世紀は、イラン高原青銅器時代から鉄器時代に移行した、大きな文化的変動期にあたっていた。この変動期に現れたのが、ゾロアスターだったのである。
 ゾロアスター教では、世界を善の神アフラ・マズダー(オフルミズド)と悪の神アングラ=マンイユ(アフリマン)の闘争ととらえる。善とは、生命であり光である。悪とは、死であり闇であり、世界を破滅に導く根源であった。同じアーリヤ系のバラモン教とは異なり、ゾロアスター教が自然の神々を崇拝する宗教でなかったことは、重要である。世界を、極めて倫理的に見ていたのである。聖典は『アヴェスター』であるが、後代のササン朝時代(4世紀?)に編集された。
 この善悪二元論は、マニ教で独特な形で深化した。また、その強い倫理性は、ユダヤ教キリスト教に大きな影響を与えた。特に終末論(最後の審判)は、ユダヤ教キリスト教に引き継がれた。

※現在ゾロアスター教徒は、イラン、パキスタン、インド西部、アメリカなどに15万人いると言われている。イギリスのロックバンド・クイーンのヴォーカルだったフレディ・マーキュリーの両親はゾロアスター教徒だった。本人も?

ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』(1885)のツァラトゥストラゾロアスターのドイツ語形だが、ゾロアスター教の解説書ではない。ニーチェは、キリスト教の世界観を批判し、善悪二元論の彼方を目ざす思想を、主人公ツァラトゥストラに語らせた。

《参考文献》
 山本由美子『マニ教ゾロアスター教』(世界史リブレット4[山川出版社])