2019年センター試験・世界史B[良問はありましたが…]
詳細な分析は大手予備校などにおまかせしますが、授業のあり方との関連で、いくつか簡単に述べておきたいと思います。
【評価できる出題】
◆次の2問は良問でした。
① 第3問の問3 グラフの問題
以前から数量的把握の必要性を述べてきましたが、ようやく3年前からグラフが出題されるようになりました。
今回は、文章と2本のゲラフの組み合わせの問題で、非常に良かったと思います。
今後は、このような「考えて解く問題」を増やしてほしいものです。
② 第3問の問5 地図の問題
比較して考える必要がある点で、良い地図問題だったと思います。
アンカラの戦いの地図問題と合わせて2問というのも、バランスがとれていました。
◆文化史が大問ごとに適切に出題されていました。
特に、「事績や戦争の記録」(第2問の問3)や「巡礼」(第3問の問7)などに、文化史を組み入れた点は評価できます。
◆近年出題されていなかった文字の問題が出されました(第2問の問4)。
文字や言語は、世界史において大変重要ですので、良かったと思います。ただ、センター試験では、女真文字と満州文字の区別まで要求しなくてもいいような気がします。
【さらに検討を加えてほしかった問題】
●第1問の問5(冷戦期の出来事)
年代整序の問題ですが、cのキューバ危機以外は典型的な冷戦期の出来事ではありません。1940年代末から50年代にかけての出来事を一つ入れるべきだったと思います。
●第1問の問9(ロシアやソ連の君主・指導者)
①のイヴァン3世を除いて、他の選択肢がすべて20世紀の人物になっていました。19世紀の君主を一人は入れてほしかったと思います。
●第2問の問2(①のフォークランド紛争)
誤文ではありますが、フォークランド紛争を取り上げる必要はあるでしょうか? 下線部「支配」についての選択肢は、他にたくさん考えられるはずです。
ラテンアメリカの現代史の出来事を組み入れたいのであれば、パナマ運河の支配権、メキシコ革命など、他に重要な出来事があります。
●第4問の問2(「ピピンの寄進」の時期)
全く不適切とは思いませんが、時期を問うべき出来事は、他にたくさんあります。
「ピピンの寄進」であれば、その意義を問う問題を工夫してほしかったと思います。
【全体としての問題点】
■イスラーム世界の出題について
19世紀〜20世紀のイスラーム世界を取り上げた問題が見当たりませんでした。大変残念なことです。
■ラテンアメリカの出題について
ラス=カサスの出題は良かったと思います。
ただ、センター試験では、アステカ、インカ、マヤについての出題に比べ、近現代のラテンアメリカ・カリブ海地域についての出題が少ない傾向があります。ラテンアメリカ・カリブ海地域の近現代に目を向けさせるような出題が望まれます。
■資料の写真について
7枚の写真が使われていますが、参考資料に過ぎません。すべて、写真がなくとも解ける問題です。
なぜ、何十年も、このような出題のし方を続けているのでしょうか?
<写真+文章>などで、考える問題を作ってほしいものです。
■リード文と出題との関係について
今回も、すぐれたリード文だったと思います。しかし、リード文が設問に生かされていません(これも何十年も続いています)。
リード文を読解しながら答えるような出題が望まれます。(この形に近いのが、グラフの問題でした。)
★高校の授業に良い影響を与えるような出題をお願いしたい、とあらためて思いました。