近世

♥世界史ブックガイド[文化と社会]⑬【保苅瑞穂『モンテーニュ よく生き、よく死ぬために』

「モンテーニュは有名だけど過去の思想家、現代とは関係ない」と、ほとんどの人が思っているでしょう。「ギリシア・ローマの古典に通暁した、ちょっと保守的な教養人」というイメージもつきまといます。それに、『エセー』を読むのはかなり大変です。 私も、…

近世 ヨーロッパ 【啓蒙・ルソー・女性】

★18世紀を中心として、ヨーロッパは啓蒙の時代を迎えた。知識を拡大して無知蒙昧な状態をなくし、不合理を正そうとする考え方の広がりである。日本語で啓蒙と訳されている語は、英語でもフランス語でもドイツ語でも、「光」や「照らすこと」を意味していた。…

近世 ヨーロッパ 【ユグノー戦争とモンテーニュ】

■ユグノー戦争(1562〜98)と呼ばれる宗教戦争・内戦は、なぜ起こったのだろうか。背景を、三つ考えたい。 一つ目は、主権国家形成期だったことである。この内戦はイタリア戦争終結(1559)直後に始まった。イタリア戦争から、ヨーロッパは主権国家形成期に…

近世 東アジア・中央ユーラシア 【モンゴル帝国と草原の心】

★1206年、テムジンはクリルタイ(大集会)で、モンゴル系・トルコ系遊牧民の君主となり、チンギス・ハン(偉大な王)と称した。モンゴル高原に、一つの強力な政治勢力が現れたのである。「イェヘ・モンゴル・ウルス」(大モンゴル国)である。クリルタイが開…

近世 ヨーロッパ 【トマス・モアの『ユートピア』】

■ユートピアという語は、日本語の中に定着している。あることを否定する時に使われることもあるが、まだイメージの喚起力を失っていない。もともとは、500年前にトマス・モア(1478〜1535)が造った語で、その著書名ともなった。日本語では「理想国」・「理…

近世 ヨーロッパ 【デューラーと宗教改革の嵐】

★ネーデルラントのアントウェルペンを訪れていたデューラーは、ルターが暗殺されたらしいという知らせを聞いた。1521年5月のことである。彼は、日記に「おお神よ、もしルターが死ねば、これから誰が聖なる福音をかくも明瞭に説いてくれるのか」と書いた。た…

近世 ヨーロッパ 【17世紀はオランダの世紀】

◆スペインとの独立戦争(1568〜1609)を戦いながら、ネーデルラントの北部7州(オランダ、7州のうちのホラントが語源)は急速に発展した。カトリックの中心スペインに対し、北部7州にはカルヴァン派の人々が多かった。1581年の独立宣言で成立したのは、絶…

近世 ヨーロッパ 【血液は、循環している】

★心臓の働きと血液の循環を立証したハーヴェイ(1578〜1657)は、高校の世界史でも倫理でも、あまりに軽く扱われている。1628年出版の『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』は、17世紀科学革命の一翼を担う、重要な書物であった。 後のダー…

近世 ヨーロッパ 【カントの町・ケーニヒスベルク】

■カント(1724〜1804)は東プロイセンのケーニヒスベルクに生まれ、一度もこの都市の外に出ることなく生涯を終えた。同じドイツのベルリンやフランクフルトやミュンヘンほどには知られず、今はロシア領カリーニングラードになってしまった都市。しかし、そこ…

近世 アジア 【ザビエルの遺骸】

■1543年にポルトガル人が種子島に漂着したことから鉄砲が伝来したこと、そして6年後にイエズス会のザビエルがやって来たことは、よく知られている。しかし、なぜか、ザビエルとポルトガルの関係が見えるようには教えられない。 ポルトガル人種子島漂着の前…

近世 ラテンアメリカ 【コルテスとマリンチェ】

■1519年、スペイン人コルテスはメキシコ湾に侵入し上陸した。高原部に入り、トラスカラ(アステカ帝国の支配に抵抗し独立を維持していた都市国家)の部隊と戦った。コルテス側は兵500人(うち騎兵15)であったが、数万のトラスカラ部隊を圧倒した。鉄製武器…

近世 ヨーロッパ 【旅するデカルト】

◆フランス人デカルト(1596〜1650)は、名門ラ・フレーシュ学院(イエズス会が設立)で10歳から18歳まで学んだ。1610年アンリ4世が狂信的旧教徒に暗殺されると(16世紀後半のユグノー戦争の余燼はまだくすぶっていた)、遺言により、アンリ4世の心臓はラ・…

近世 東アジア 【王安石の情熱】

★新法で有名な、北宋の政治家・王安石。改革を開始する約10年前皇帝・仁宗に提出した「万言書」は、古来名文と言われてきた(王安石は唐宋八大家に数えられる)。そこには、37歳の官僚の、改革へのまっすぐな情熱が表れていた。「これが1000年前の文章か」「…

近世 ラテンアメリカ 【ジャマイカの苦難】

★ジャマイカは、日本ではレゲエやコーヒー豆ブルーマウンテンで知られてきたが、かつてイギリスの植民地であった(1670〜1962)。2012年ロンドン・オリンピックにおける、ウサイン=ボルトの3冠は、ジャマイカの人々やイギリスにいる60万人のブラック・カリ…

近世 ヨーロッパ 【ガリレオ・ガリレイという名前】

★ガリレオ・ガリレイは、不思議な名前だ。名と姓がほとんど同じである。アルファベットで書くと、Galileo Galilei となり、一字しか違わない。これはイタリアのトスカーナ地方の習慣で、姓と同じような名をつけたという。 さらに興味深いのは、ガリレイとい…