総合
◆世界史教育において、政体は必ずしも自明なものではありません。教員も、きちんとした定義はしないまま、専制君主政、共和政などの用語を使っているのが現状だと思います。◆一般的な使用では錯綜が見られ、学問上も諸説がありますので、政体の理解は簡単で…
◆ネアンデルタール人から始まったとされる死者の埋葬は、人間にとって大変重要なものであり続けています。◆葬送儀礼のあり方や遺体・遺骨・遺灰などの保管の仕方は、人間の歴史に深く関わってきました。◆政治的権力や宗教に関わる事例もたくさんあります。 …
◆「アクティブ・ラーニング」という語が独り歩きしている印象は否めませんが、授業のありかたを考え直すきっかけになっているとは思います。◆しかし、「歴史=暗記」という学習から、具体的にどうやって脱皮していけばいいのでしょう?◆たとえば、膨大な知識…
★タレスが「万物の根源(アルケー)は水である」と語ってから、二千数百年。哲学は、ずっと世界の原理を明らかにしようとしてきたと思います。世界を貫いているロゴスを探求してきたと思います。★しかし、今、ロゴスとアルケーの探求を、哲学は科学に譲った…
◆アメリカ大統領選挙[2016/11/8]におけるトランプ勝利は、世界に大きな衝撃を与えました。◆世界史を学んできた者としてこの事態をどう受けとめればいいのか、いろいろ考えさせられました。◆これから述べるのは、結果判明から5日という時点での、暫定的な…
有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」には、白いバラが描かれています。絵の左半分、西風ゼフュロスが吹き起こす風の中に舞っているのが、バラです。 なぜ、バラが描かれたのでしょう? 香りの女王でもあったバラは、古代ギリシア以来、ヴィーナス(…
「海洋国家の地政学」という副題を持つ本書は、2013年にフランスで出版されました。あまり年数をおかずに日本語版が出版されたのは、うれしいことです(大塚宏子訳、監修・樺山紘一)。 本書は、古代から現代までを、「海洋を舞台とした歴史」という視点から…
両親の言葉であるベンガル語の中で幼少期を過ごしながら、アメリカで英語によって自己形成し、著名な作家となったジュンパ・ラヒリ。彼女が、イタリア語に惹かれてイタリアに移住し、習得したイタリア語で書いたのが、本書です。21のエッセイと2つの短編小…
★「フェミニズム批評の古典」と言われる本の新訳が出ました(片山亜紀訳)。★原著の出版は1929年でしたが、前年の講演をもとにしています。1928年は、イギリスにおいて、21歳以上の男女が平等に選挙権を持つようになった年でした。そのような時代の中で、ウ…
★実は、「入門書」ではありません。講義調で書かれていますので多少読みやすくはなっているものの、かなり高度な内容です。カロリング・ルネサンスから現代までのヨーロッパ哲学・文学の根底を流れているものについて、縦横無尽に述べられています。ほとんど…
世の中には、隠れた名著がたくさんあります。司馬さんの傑作小説群や紀行シリーズほどには目立ちませんが、この『草原の記』はまさにそうした本だと思います。遊牧民の歴史を縦横にたどりながら、激動の20世紀を生き抜いた、ツェベクマさんというモンゴル女…
ウクライナ人のオリガさんが、日本語で書いた美しい本です。 出版されたのは、ロシアによるクリミア併合(2014年3月18日)の1ヵ月半前でした。その後のウクライナの状況を思うと、痛みなしには読むことができない本でもあります。 「母親とおばあちゃんの…
稀代のフランス文学者による、花についての博物誌的なエッセイ集。「水仙」から「蘭」まで、25の花々が取り上げられています。文庫サイズながら、1つの花に3点の古今東西の植物画がカラーで収録されている、優美な本です。 花を好きな人ならば絵を眺めてい…
★心臓。身体の中で、唯一、拍動する臓器。この特別な臓器は、洋の東西を問わず、感情や魂の座と考えられてきた。たとえば、古代エジプトのミイラづくりでは、他の内臓や脳を取り出しても、心臓は残された。死者の国の神オシリスの前で裁きを受ける時も、天秤…
★新しい社会関係の中で、異なる母語を持つ人々が、コミュニケイトしようとする時生み出される、橋渡しのオーラルな言語は、ピジンと呼ばれる。長年話される中で、ピジンの発展したものがクレオールである。橋渡しの域を越え、その社会に生きる人々のかけがえ…
★カナダについて、一般に日本人はよいイメージを持っている。かえでの葉をデザインした国旗の親しみやすさのためかも知れない。また『赤毛のアン』がよく知られているからかも知れない。現在は先進国の一角を占めてはいるが、「覇権」とは無縁だったためかも…
1918年、フランスの思想家ジョルジュ・バタイユは、『ランスのノートルダム大聖堂』と題する小冊子を出版した。バタイユは書いている。 『我々の間には、あまりに多くの苦痛、あまりに多くの暗闇がある。(中略)たしかに神の光は我々すべてのために輝いてい…
■エフェソスは、エーゲ海東岸のギリシア人(イオニア人)の都市で、前11世紀頃からアルテミス神殿を中心に発展した。神殿の規模は、アテネのパルテノン神殿をしのぐものだったという。アルテミスは、通常ギリシア神話では狩猟と月の女神とされるが、もともと…
★たくさんの人々に歌い継がれてきた「アメイジング・グレイス(すばらしい、神の恵み)」。辛い歴史が、この歌を生んだ。 作詞者のジョン・ニュートンは、イギリス国教会の牧師であった。1770年代、まだ牧師としての修行を積んでいる時、屋根裏の小さな一室…