古代〜現代【共和政を理解しづらい生徒たち −政体の理解の重要性−】
◆世界史教育において、政体は必ずしも自明なものではありません。教員も、きちんとした定義はしないまま、専制君主政、共和政などの用語を使っているのが現状だと思います。
◆一般的な使用では錯綜が見られ、学問上も諸説がありますので、政体の理解は簡単ではありません。
◆また生徒たちは、共和政をなかなか理解できないようです。カルチャーセンターで教えてみてわかったのですが、この点は大人の方も同じでした。天皇制の伝統があるためでしょう、日本人は共和政になじみがないのです。
◆ただ、このことは世界史の理解に大きな障害となります。たとえば、ローマ史ですが、共和政から元首政への転換の意味が理解できなくなります。また、17世紀イングランド史、フランス革命史、19世紀フランスの政体の変遷などの理解も困難になっていると思います。
◇私の授業では、「支配者がだれか、どういう組織か」に重点をおきながら、下記のように分類しています。
◇世界史学習上の必要性から考えたもので、暫定的なものです。また、学問上の厳密さには欠けるところがあるかも知れません。
【政体】
★大きく二つに分類されます。
〇君主政:王や皇帝をおく政治体制(王政、帝政)
〇共和政:王や皇帝をおかない政治体制
*共和政の場合、現在は、多くの国が大統領制をとっています。
【君主政】
★大きく二つに分類されます。
A 専制君主政:君主が統治に直接関わります。
(ほとんどの帝政や絶対王政がこのタイプです。初期のカリフ制やスルタン制も含まれます。)
B 立憲君主政:憲法や議会・内閣が統治の中心になり、君主の権限は大きく制限されます。
(17世紀末のイングランドから登場しました。)
*AとBの間には、さまざまなヴァリエーションがあります。たとえば、明治憲法体制は、そのヴァリエーションの一つです。
【以上の分類に関連する事項】
■貴族政や寡頭政は、君主政と共和政の中間形態になります。僭主政は、一応君主政に分類しています。
■民主政(治)は、君主政・共和政とは別の概念ととらえています。
■したがって、君主政においても共和政においても、民主政治は可能です。また、君主政においても共和政においても、専制政治・独裁政治は出現します。
■なお、「〇〇帝国」と呼ばれても、帝政とは限りません。たとえば、イギリスは立憲君主政ですが、19世紀半ばから後半は、その支配地域の広大さと経済的繁栄から、the British Empire (大英帝国)と呼ばれました。
■蛇足ですが、三権分立制(政治権力を三つに分け、互いにチェックさせる制度)は、専制政治・独裁政治を防ごうとするしくみです。