<問いからつくる世界史の授業>(近世〜近代)【奴隷貿易の中から生まれた歌】

★世界史の中で、音楽は軽い(不当なと言うべきでしょうか)扱いを受けています。通常、17〜19世紀のクラシック音楽の作曲家たちにちょっと触れただけで終わってしまうでしょう。このことは、多分、世界史のありかたの根本的なところに関わっていると思います。現状では、どうしても「事件史」という性格が強く残り、「人類の諸活動の歴史=人類の営みとしての歴史」になっていきにくいのです。

★以上のような思いもあって、ここ10年ほどは、今回のテーマを必ず取り上げることにしています(予備校の授業でも取り上げています)。「大西洋三角貿易」の最後に、次のようなオリジナル問題を出して、考えてもらっています。


☆問題☆[ プラスα

 大西洋奴隷貿易の中から生まれ、今は世界中で親しまれている歌がある。その歌を、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 ① グレゴリオ聖歌
 ② アロハ・オエ
 ③ アメイジング・グレイス
 ④ きよしこの夜

※正解は、③です。


◇少し考える時間をとったり、互いに相談させたりしています。個別に「どれだと思う?」と尋ねたり、全員に手を挙げてもらったりした後、正解を伝え、解説しています。その際、楽譜と歌詞を配っています(CDを聴いた年度もありました)。

◆「アメイジング・グレイス」の歌詞を書いたのは、イギリスで牧師になるための修行をしていたジョン・ニュートンでした(18世紀の後半のことです)。彼は、しかし、若い時、奴隷船の船長だったのです。そのような仕事をしたことへの後悔の念が、歌詞に表れています。

◆メロディーについては諸説がありますが、アメリカの黒人奴隷の間で口ずさまれていたことは間違いありません。こうして、歌詞もメロディーも大西洋奴隷貿易に関わるものだったことがわかります。

◆その年の進度や生徒たちの様子にもよりますが、できるだけ次の事項にまで触れることにしています。

 ○ウィルバーフォースらの活動による、イギリス帝国内での奴隷貿易の廃止 → 奴隷制度の廃止
 ○奴隷貿易港だったリヴァプール市の、20世紀末における正式謝罪


※詳しくは、次のページをご覧ください。 ➡ 【「アメイジング・グレイス」が生まれた】

こんな考え方で書いていきます【<問いからつくる世界史の授業>について】