【世界史A・こんな授業をしてみました<その3>】
◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の3回目です。
《Ⅲ.年間の授業内容(後半)です。全体として第Ⅱ部では、人間社会の発展とその中の負の歴史(インディオ人口の激減、奴隷貿易、ジャコバン派の独裁、植民地化など)を同時に見る目を養おうとしました。》
《「総合的な社会文化史」の例をあげておきます。》
①第2章<2>の9では、ザビエルの日本人観について考えてもらいました。
②ザビエルの遺体にまつわるエピソードからは、「死の文化」を考えました。エジプトのミイラや「死者の書」につながっているテーマです。
③ルネサンスの絵画やザビエルの肖像画、フランス革命の「自由の女神」では、図像学の成果を取り入れました。
④第2章<3>の3で「アメイジング・グレイス」を、第4章<1>の3で「アロハ・オエ」を取り上げ、音楽を歴史の中で考えています。歌詞と楽譜をプリントしました。
⑤<18世紀後半から19世紀へ>の3では、「独立宣言」と「ゲティスバーグの演説」の一部を英文で取り上げました。
⑥第4章<2>の1では、ゴーギャン、ガウディ、ニーチェ、フロイトを取り上げました。
《「日本史との関連」の具体例をあげておきます。》
①第2章<2>の2・4・9は、日本史とクロスさせました。
②第2章<3>の1では、日本で「イギリス」という国名を使用するようになった経緯を取り上げました。
③第3章の1では、蒸気船の発明に関連してペリー来航を取り上げました。
④第4章<1>の1で明治維新を取り上げ、欧米との同時代性を考えました。
⑤第4章<1>の2で、日本の産業革命に触れました。
⑥第3章の4で明治の啓蒙思想家に、第4章<1>の3でアジアの中での近代日本の特殊性(植民地化されず植民地を持った歴史)に触れています。》
第Ⅱ部 近世から近現代へ
第2章 近世ヨーロッパ
<1>ルネサンス
1 ルネサンスとは
2 イタリア・ルネサンスの芸術家・思想家
3 他の国々のルネサンス
4 科学や技術の発達 ※中国の科学・技術を比較して取り上げました
<2>大航海時代
1 ヨーロッパ人の、アジアへの強い関心 ※ここでモンゴル帝国を取り上げました
2 ポルトガル人のアジア進出
3 スペイン人のアジア進出
4 オランダ人のアジア進出
5 コロンブスの大西洋航路開拓
6 アメリゴ・ヴェスプッチの探検
7 激動のアメリカ大陸 ※ここでアステカ、インカの滅亡を取り上げました
8 アメリカ大陸原産の作物の伝播
9 ザビエルのアジア布教
<3>17〜18世紀のヨーロッパ
[地図演習:現在のヨーロッパ諸国]
1 「イギリス」の形成
2 イギリスの特色 ※名誉革命から産業革命、パックス・ブリタニカまで概観しています
3 大西洋奴隷貿易と砂糖 ※かなり時間を割きました
[地図演習:アメリカ大陸の現在の国々]
第3章 近代の始まり
<18世紀後半から19世紀へ>
1 イギリスの産業革命
2 人権という考え方の成立
3 アメリカ独立革命と南北戦争 ※ここでキング牧師まで触れました
4 啓蒙思想とフランス革命・ナポレオン ※女性の権利の主張も取り上げました
第4章 近代から現代へ
<1>19世紀の世界
1 国民国家の成立
2 産業社会の進展 ※第二次産業革命まで触れています
3 アジア・アフリカ・オセアニアの植民地化 ※ここで20世紀の独立運動や脱植民地化まで触れています
4 ロシアの領土拡張
5 19世紀ヨーロッパの文化 ※科学・技術に重点をおきました
<2>19世紀末から20世紀へ
1 西欧的価値観の揺らぎ
2 戦争が続いた時代(19世紀末〜20世紀半ば)
★第2章の大航海時代は、グローバリゼーションの始まりとして、また西欧諸国による非西欧地域の支配の始まりとして重視しました。
★宗教改革は、項目としてはあげていません。《年間の授業内容(前半)》に組み入れ、エラスムスやザビエルのところでも触れるかたちにしました。
★生徒たちは(多分日本人全体に)、政体(君主政や共和政)についての意識が弱いため、前半の秦やローマから名誉革命・フランス革命・アメリカ独立革命まで繰り返し触れてきました。
★第4章(特に後半)は、残念ながら駆け足になってしまいました。
★少し話が大きくなりますが、次回指導要領改訂では、A科目・B科目の区別をやめ、世界史・日本史の枠も取り払い、世界史をベースとした「総合歴史」のような科目をおくべきだと考えています。4単位ぐらいで先史・古代から現代まで学ぶ必修科目です。高校の歴史教育におけるグローバル化への対応は、日本史必修ではなく、このような新科目で行うべきではないでしょうか。