【世界史A・こんな授業をしてみました<その2>】
◆2013年度に実施した世界史Aの授業紹介の2回目です。
《Ⅱ.年間の授業内容(前半)です。古代史を重視した、ちょっと変わった世界史Aです。》
※参考までに、本村凌二氏の言葉を紹介しておきます。「古代や先史時代にまで目を向けなければ、壮大な人類史の流ればかりか、未来をも語れなくなるのだ。」(2014.4.20「毎日新聞」)[2014年4月21日追記]
《「総合的な社会文化史」の具体例をあげておきます。さまざまな補助線を引いて歴史を総合的に見ようとしています。》
①<2>の4では、、『平家物語』の冒頭部分を取り上げました。
②<3>の2では、地名の歴史性を取り上げました。
③ギリシア文字とラテン文字、ラテン名と英語名、historyという語に含まれるstoryなど、文字や言語に注意を向けさせるようにしました。
④<3>の3(3)では、「禁断の木の実がなぜリンゴになったか」を考えました。
⑤<4>の4では、史的イエスと福音書の成立時期の問題を取り上げました。
⑥<4>の5では、聖母マリア信仰を取り上げました。聖母マリア信仰は、通常世界史Aでも世界史Bでも取り上げられません。しかし、ヨーロッパの絵画や建築を考える上で、さらには日本の「かくれキリシタン」を考える上でも、たいへん重要です。 》
オリエンテーション
<板書のしかたとノートづくりについて>
<歴史のいろいろな区切りかた>
<E.H.カーのことば>
第Ⅰ部 諸地域世界の特質
第1章 古代の文明と文化
<文化と文明>
<1>東アジア世界
1 東アジアの現在の国々[地図演習]
2 東アジアの農耕民・遊牧民・狩猟民
3 中国文明の形成
(1)黄河文明と長江文明
(2)殷と周 ※諸子百家に重点をおきました
(3)秦から漢へ
(4)前漢と後漢
4 中国・朝鮮・日本 ※ここでわずかに唐に触れました
<2>南アジア・東南アジア世界
1 南アジア・東南アジアの現在の国々[地図演習]
2 南アジアで生まれた宗教(概観)
3 古代南アジアの大変動
(1)インダス文明とその滅亡
(2)アーリヤ人の進入とバラモン教
4 仏教の成立 ※ブッダの思想に重点をおきました
5 仏教の発展
(1)上座部仏教
(2)大乗仏教 ※菩薩信仰に時間を割き、日本の仏教にも触れました
(3)仏像制作
<3>西アジア世界
1 西アジアの現在の国々[地図演習]
2 オリエントと中東
3 古代オリエント文明
(1)メソポタミア文明
(2)エジプト文明
(3)地中海東部の文明 ※ここでユダヤ教と『旧約聖書』を学習しました
4 イスラーム教 ※現代のイスラーム地域にも触れています
<4>ヨーロッパ世界
1 ヨーロッパ世界の特色
2 古代ギリシア文明 ※ギリシア神話に時間を割きました
3 古代ローマ文明
4 キリスト教の成立 ※宗教改革までの大きな流れも説明しました
5 カトリック教会の成立
★<その1>でも述べましたが、世界史Aの授業内容は、この学校のカリキュラム全体の中でも考える必要がありました。世界史B・日本史B・倫理への接続という点からも、このような構成にしました。近現代史中心の授業を行った場合、2年で日本史Bを選択する生徒たちは、仏教の考え方やその歴史を知らないまま、日本の古代史・中世史を学ぶことになってしまいます。
★<E.H.カーのことば>とは、『歴史とは何か』の有名な一節で、「歴史とは、現在と過去との対話である」です(使用した教科書にも載っていました)。授業は、まさしくこの対話のためにあります。このことは、いくら強調しても、し過ぎることはありません。
★<4>までで、古代中国文明と古代ギリシア・ローマ文明、そして成立期の三大宗教を押さえたことになります。7月までに終えようと思っていましたが、地図の演習にも時間を割かなければならず、結局9月までかかりました。ただこの期間に、「過去と現在のつながりを考える」という意識は、生徒たちの中にある程度定着していったと思います。
★中世の取扱いについては内心忸怩たるものがありますが、2単位の限界です。中世ヨーロッパについては、<4>の1と5で触れただけとなりました。ただ「ルネサンスの始まり」と「大航海時代の背景」で、もう一度取り上げます。