<問いからつくる世界史の授業>(総合)【ハート記号はいつから?】

★あえて繰り返しますが、政治的な事件や戦争、政治制度や経済システムの変遷だけが歴史ではありません。民族や宗教や思想などを加えても、まだ十分とは言えないでしょう。世界史をよく理解するためには(人びとの営みとして世界史を理解するためには)、身近なものに着目することも大切だと考えてきました。

★近年は、コーヒーや茶などの飲み物、織物やファッション、スポーツなどの歴史も取り上げられ、世界史もかなり豊かになってきました。今回は、世界史の授業をさらに豊かなものにするためのオリジナル問題です。「ハート記号が、いつ、どこで始まったか」は、わたし自身の長年の疑問でした。それを、授業に組み入れています。

★生徒たちにとって非常に身近な記号ですので、多分、すべての生徒が関心を持つでしょう。授業は<問題+解説(◆の部分)>で構成します。問題を提示した後、生徒たちに話し合わせてもおもしろいかも知れません。


☆問題☆ [プラスα]
 
 今私たちは心をハート記号で表している。この表現は、いつ頃、世界のどこで始まったと思うか。次の①〜④のうちから、一つ選べ。

 ① 前3世紀、ヘレニズム時代のアレクサンドリア
 ② 5世紀、ヒンドゥー文化が栄えたグプタ朝のインドで
 ③ 9世紀、イスラーム世界の中心バグダード
 ④ 15世紀、ルネサンス初期のフランスで


正解は、④です。恋愛感情の表現として、フランスで登場しました。その背景には、中世のトゥルバドゥール以来の恋愛感情表現の伝統がありました。イタリアのダンテやペトラルカの作品の影響もあったと思われます。個人の感情が重視され、表現される時代に入ったのです。

◆一方、神への熱烈な愛の表現として、神との交感の象徴として、16世紀頃から、キリスト教の中でも(特にカトリックで)使用されました。それは、日本で描かれたザビエルの肖像画にも、はっきりと表現されています。ザビエルの心臓は、赤く燃えるハート形で描かれていました。[ザビエルの肖像画は図表で見るか、プリントして配ります。生徒たちは、ザビエルの肖像画を小学生の時から見ていますが、多分心臓にはそれほど注目してこなかったと思います。]

◆なお、興味深いことですが、ハート形のキリスト教での使用がトランプのハート記号につながったとされています。

◆のちにハート記号は、個人の恋愛感情の表現としても、普遍的な愛の表現としても、広く使われるようになりました。何気なく使っているハート記号にも歴史があるということを、生徒たちにわかってもらえればと思います。

※詳しくは、こちらのページをご覧ください。参考文献もあげてあります。➡ 【心臓・魂・ハート形】

こんな考え方で書いていきます【<問いからつくる世界史の授業>について】