古代 南アジア【仏教を多角的にみる:シッダールタの生涯】

■今回載せるのは、現在、あるカルチャーセンターでおこなっている<歴史からみる仏教>(全6回)の1回目のレジュメです。

■レジュメですので、流れがわかりにくいかもしれません。流れを理解しやすくするために、授業の意図などの解説(*がついている部分)を加えてあります。90分の授業のレジュメです。

■多分、*がついている解説部分に、本授業の特徴が表れていると思います。

■なお、一応お断りしておきますが、仏教者になりかわって教えを祖述するという授業ではありません。ねらいは、あくまで「多角的な仏教理解」です。

■世界史や倫理の仏教の授業に役立てていただければ、ありがたいです。



<歴史からみる仏教:シッダールタの生涯>

◆講座の目標

 仏教を歴史の中で多角的に理解しながら、「現代の私たちにとっての仏教の意義」を考えたいと思います。

◆まず、次のことを知っておきましょう。

 ①仏教は、世界の三大宗教の一つ

 ②仏教はインドで生まれたが、現在のインドで仏教徒は少数

  ヒンドゥー教  80.5%
  イスラーム協 13.4%
  キリスト教 2.3%
  シク教 1.9%
  仏教 0.8%     [2001年の統計]

*インドでは13世紀初めに仏教が消滅したとされていますが、この歴史をあとで考えることになります。

 ③仏教は、ヨーロッパやアメリカでも関心を持たれている

  たとえば
   
   ◇ドイツの作家ヘルマン・ヘッセ[小説『シッダールタ』]
   ◇アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス[講演集『七つの夜』
   ◇サンフランシスコの禅センターの活動

  ※仏教は
    英語ではブッディズム Buddhism
   仏教徒
    英語ではブッディスト Buddhist

*最初から、視野を広げてもらうことを意図しています。私たちは、どちらかというと<惰性態の仏教>の中で生きています。そのため、<惰性態の仏教知識>で教えがちです。それを多少変えたいと思っています。

*ヘッセの『シッダールタ』は一読の価値があります。ヘッセは、20世紀の初めに、深く仏教に学び、苦闘しながら、仏教をもキリスト教をも越えようとしました。(草思社文庫の岡田朝雄訳がよいと思います。)


1 古代インドの宗教の流れ

(1)別紙資料[自作プリント]

(2)仏教はそれまでのバラモン教を批判しながら

   紀元前500年ごろ成立

   創始者ブッダ
    本名 ガウタマ・シッダールタゴータマ・シッダッタ

     ①ブッダ=真理にめざめた者
     ②シャーキャムニとも呼ばれた(=シャーキャ族の聖者)

    ①②の尊称が中国に伝わり、漢字で表された
     ① → 佛陀(仏陀
     ② → 釈迦牟尼(釈迦)

*「ガウタマ〜」はサンスクリット語、「ゴータマ〜」はパーリ語になりますが、そこまでは触れませんでした。なお、「佛」という漢字の意味には触れています。

(3)ブッダの死後、20ぐらいのグループに分かれた(部派仏教)

   その中から、上座部仏教大乗仏教が成立
    (大乗仏教は、1〜4世紀に成立)

*最近の研究は、大乗仏教の成立に幅を持たせています。


2 シッダールタの生涯

(1)歴史的事実

  ◆ルンビニー(現在のネパール南部)で生まれた

    父 国王シュッドーダナ
    母 マーヤー(出産後7日で死去)

  ◆16歳のころ、ヤショーダラと結婚
     やがて、息子ラーフラ誕生

  ◆29歳の時、修行者になった
     6年間の修行(断食など)

  ◆35歳の時、ブッダガヤの菩提樹の下で悟りをひらいた(=ブッダとなった)
      ↓
     サールナートで、5人の修行者に最初の説法(初転法輪

  ◆80歳の時、クシナガラで死去

ブッダの布教範囲は、インド北東部のガンジス川下流域です。政治・経済・思想上の先進地でした。のちのマウリヤ朝グプタ朝の都も、この地域におかれました。ナーランダー僧院も同じです。

*あとで取り上げるガンダーラ地方は、仏教が成立した地域からは、地理的にも政治的にも文化的にも離れていたという事実を、理解しておかねばなりません。仏像制作の始まりで知られるガンダーラ地方とその周辺は、イラン系クシャーナ朝の領域でした。この地域では、仏教、ゾロアスター教、ヘレニズム文化などが混在していたのです。


(2)伝説

  ◆誕生の時の伝説

  ◆「四門出遊」の伝説

  ◆苦行の時の伝説

*一応誕生日(4月8日)にも触れています。クリスマスを祝ってもお釈迦様の誕生日はほとんど忘れてしまった日本人の現状に気づいてもらうためです。

*「四門出遊」の話は、ボルヘスの美しい文章(『七つの夜』所収)を読み上げました。ブッダの生涯について書かれたものの中で、最も美しい文章だと思います。

*苦行の時の伝説では、スジャータに触れています。

*歴史の授業でなぜ伝説を取り上げるのでしょうか? 歴史的事実とは区別しながら、伝説を生み出した人々の心情を理解するためです。


※講座の2回目では、ブッダのことばも紹介しながら、ブッダの思想について考えています。