世界史B教科書の記述を比較してみると8 【イェニチェリ】

※目的・対象教科書・評価については、【比較してみると1】

【「オスマン帝国のイェニチェリ」の記述】
■世界史においてイスラーム世界の理解は極めて重要ですが、生徒たちにとってはイスラーム用語の理解は容易ではありません。イェニチェリを例に、簡単な比較をしてみました。イェニチェリは、オスマン帝国のバルカン支配や統治システムを理解するためにも重要な語です。

<山川>    
歩兵軍団であることを含め、きちんと説明がなされている。ただ「デヴシルメ」という語を出してほしかった。イェニチェリを描いた絵は鮮明に印刷されている。
 なお、「イスタンブルコーヒー店に集う人々」という図版の掲載に表れているように、教科書におけるイスラーム史の扱い方がよく考えられている。物産や生活からイスラーム史を考えることも大切である。

<実教>    
イェニチェリと並んでデヴシルメを、ゴシック体で記述している。またデヴシルメの様子を描いた細密画が載せられ、その説明も要を得ている。
 山川と同じ図版が「イスタンブル」のコラムに掲載されているが、絵画の切り取り方は山川の方が良い。コラムの文章はやや冗長かと思われる。

<東書>    
「火器で武装した陸軍」というコラムで、詳しく説明している。図版も2種類使われており、軍楽隊の部分が強調されている。残念ながら「デヴシルメ」という語が出されていないが、「イェニチェリ軍団の変容」が、東書独特の目立つ注で述べられている。
 なお、モハーチの戦いの図版を載せたり、ヨーロッパの宗教改革期のページに「オスマン帝国のウィーン包囲」の図版を載せるなど、工夫している。

※なお、本ブログの【オスマン朝の勃興とバルカン支配】を参照していただきたい。

世界史B教科書の記述を比較してみると9【地図(宗教改革後の宗派分布)】