復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(中世)【プランタジネット朝】

《復習プリントから》

ノルマン朝後のイングランドでは、1154年、アンジュー伯でノルマン朝の血を引くアンリが( 1 )として即位した。これがプランタジネット朝である。彼は、イングランドおよび( 2 )西半分の広大な領土を、海峡をまたいで統治することになった[アンジュー帝国とも呼ばれる]。12世紀後半、彼の下で、行政・司法制度の整備が進んだ。また、ノルマン朝時代に引き続き、( 2 )語の語彙が英語に流入した。

●( 1 )の後を継いだのはリチャード1世で、第3回十字軍を率いて、アイユーブ朝の( 3 )と戦ったことで知られる。彼の後を継いだのがジョン王だったが、( 4 )との戦いに敗れ、フランスの領土の大半を失った。さらに、教皇( 5 )とも争って破門された。ジョンは重税を課したため、貴族が立ち上がり、1215年、( 6 )[大憲章]を王に認めさせた。諸侯[大貴族]と高位聖職者が王権の濫用を戒めた、歴史的文書である。しかし、まもなくジョン王は( 6 )を無視した。

●次のヘンリ3世も( 6 )を無視したため、( 7 )を中心とする貴族たちは反乱を起こし、内戦となった。この過程で、諸侯と高位聖職者に州や都市の代表が加わった議会が開かれた[1265]。内戦を終結させて即位したのが( 8 )で、1295年、いわゆる模範議会を開催する。ただ、州と都市の代表が常に集まるようになるのは、14世紀になってからであった。州の代表となったのが( 9 )[郷紳]である。

●14世紀前半( 10 )が( 2 )王位継承権を主張して、百年戦争[1339〜1453]が始まった。戦争中の1399年にプランタジネット朝は滅び、ランカスター朝となった。イングランドは、百年戦争敗北により、( 11 )を除くすべての( 2 )領を失った。

プランタジネット朝の時代、イングランドには騎士道物語の代表作である『( 12 )物語』が広まった。敗れた側の( 13 )人の英雄( 12 )の伝説を、プランタジネット朝は王権のために利用したのである。ヘンリ7世が1485年にひらいた( 14 )朝でも、『( 12 )物語』は最大限に活用された。

【解答】
1 ヘンリ2世   2 フランス   3 サラディン   4 フィリップ2世   5 インノケンティウス3世   6 マグナ・カルタ   7 シモン・ド・モンフォール   8 エドワード1世   9 ジェントリ   10 エドワード3世   11 カレー   12 アーサー王   13 ケルト   14 テューダー


《授業との関連》

★少し詳しいプリントにしてみました。

プランタジネット朝(発音する時は「プランタ・ジネット」という感じになります)をまとまった形で教えるのは結構難しく、以前は授業をうまく展開できませんでした。現在では、基本的に次のことを押さえるようにしています。

 ①ノルマン朝に続くフランス系の王朝であり、両王朝とも海をはさんだ複合国家であったこと。
 ②「イギリス」ではなく、イングランド王国の歴史であること。
 ③可能な限り、文化史の内容を時代の中に位置づけること。

★①については、近代以降の国民国家の眼で見ないことが大切です。

★②についてですが、「イギリス」を使ってしまうと現在の連合王国との区別がつかなくなり、ウェールズスコットランドアイルランドとの歴史的関係が理解できなくなってしまいます。エドワード1世の時代から、ウェールズスコットランドアイルランドとの関係が顕在化します。

★③の観点で、フランス語や『アーサー王物語』を取り上げると、授業にふくらみがでます。なお、私の場合、世界史Bの授業全体を③のような考え方で展開しています。

★「シモン・ド・モンフォールの議会」については、最近は過大視しないようにしています。「イギリス議会の起源」という言い方についても、そこまで言い切れないという見方を紹介しています。

ウィクリフやワット・タイラーの乱については、別の文脈で取り上げますが、ウィクリフエドワード3世の時代の人であること、ワット・タイラーの乱はプランタジネット朝末期の出来事であることを、簡単に触れています。


《教科書との関連》
◆各教科書とも、「シモン・ド・モンフォールの議会」を「イギリス議会の起源」と記しています。<山川(新)>だけが「イギリス議会の起源」という言い方を避けていて、新しい見方に沿ったものとなっています。<山川(新)>の記述は、次の通りです。

 「13世紀半ばのイングランドでは、シモン=ド=モンフォールら諸侯主導の国制改革の過程で都市の代表がはじめて議会に招集された。」

◆<山川(新)>では、「プランタジネット朝アンジュー朝)」という表記もあり、適切です。ただ残念ながら、プランタジネット朝の成立、ジョン王とマグナ・カルタ、シモン・ド・モンフォール、エドワード1世の模範議会が、それぞれ別のページに記載されており、流れがわかりにくくなっています。

◆フランス語、『アーサー王物語』をプランタジネット朝のところで取り上げている教科書はありません。

※「シモン・ド・モンフォールの議会」やプランタジネット朝期の文化については、最新の概説書である『イギリス史10講』(近藤和彦著、岩波新書)が、とても参考になります。