世界史ミニ授業(古代)【イヴの食べたリンゴ(その1)】

センター試験が終わって、ちょっと一息ですね。それで、今日は、特別なテーマで授業したいと思います。楽しんでください。だけど、今日もまた、アッと驚くような発見があるかも知れません。普通は、世界史ではやらない授業だと思います。もし、世界史に関する「××公会議」っていうのが開かれたら、今日の授業は異端とされると思います。(生徒たち、大笑い。)まあ、異端ていうのも、魅力はあるんだよね。

 では、始めます。今日のテーマは、これです。[板書:イヴの食べたリンゴ](生徒たちのどよめき)この話は、何に書いてあるんだっけ? (生徒たち「聖書!」)そうだね、もう少し正確に言うと? (何人かの生徒「旧約聖書」)そうだね。去年、2年生の時に、ユダヤ教のところでやったね。『旧約聖書』の最初に「創世記」というのがあっって、その中に「アダムとイヴの楽園追放」の話がある。(生徒たち、うなずいている。)どういう話だったか、だいたい話せる人いる? (数人の生徒たち、手を挙げる。)じゃ、○○さん、話してみて。(あらすじを話してくれる。)はい、その通りだね、ありがとうございました。

 先生、もう「イヴの食べたリンゴ」って書いちゃったから、りんごで話してくれたんだけど、本当は、旧約聖書には、何の木の実って書いてあるんだっけ?(ある生徒「禁断の木の実」)そうか、取って食べてはいけない木の実だからね。だけどね、旧約聖書には、別な言い方で書いてあるんだったね。(ある生徒「善悪の木の実」)そうなんです! 「善悪を知る木の実」って書いてあるんだ。[板書:善悪を知る木の実]「善を知る」でもない、「悪を知る」でもない、「善と悪を知る」なんだね。これは、私の推測だけど、ある宗教の影響があるかも知れない。この世界は善の神アフラ・マズダと悪の神アーリマンの闘争で成り立ってるって考えた宗教、何だっけ? (生徒たち「ゾロアスター教」)そうだね、ユダヤ教キリスト教最後の審判っていう考え方にも影響を与えたって、やったね。そこから考えると、あり得ることかもね。あと、蛇の存在とか、木の実を食べたら裸であることを知って恥ずかしくなったとか、興味深いことが他にもあるんだけど、今日はリンゴに絞ってみるね。

 いつのまにか、この「善悪を知る木の実」がリンゴになっちゃった。それで、さっき○○さんが言ってくれたように、蛇にそそのかされて、最初イヴが食べて、アダムにもあげた。その時、これは本当は旧約聖書には書いてないんだけど、アダムが食べた時喉にひっかかったっていう話ができたんだよね。それで、この喉仏を何て言うようになったんだっけ?(何人かの生徒「アダムズ・アップル」、男子は自分の喉仏をさわっている。)そうなんだね。私も、アダムの子孫なんだね。

 ようやく、今日の本題に入ってきました。なぜ、「善悪を知る木の実」がリンゴと言われるようになったのか? あっ、さっき言い忘れたけど、「知恵の木の実」っていう場合もあるんだね。コンピュータのアップルのマーク、あれは「知恵の木の実」かもね。「知恵の木の実」をかじったから、今コンピュータを使うようになったっていう意味が込められてんのかな? わかんないんだけど。

 はい、それで、今日の本題ね、なぜリンゴと言われるようになったのか? 今日はリンゴを持ってきました。[袋からリンゴを取り出す。](生徒たち「オー」)リンゴの原産地、どこだかわかる? (生徒たち、キョトンとしている。ある生徒「青森!」生徒たち、爆笑。)日本ではないんだね。ただ、どこだかは、はっきりはわかってないらしい。有力なのは、オリエント北部説かな? それでね、オリエントから地中海にかけては、リンゴは特別な果物、神聖な果物って考えられていたらしいんだ。[板書:リンゴは神聖な果物]どうして、そう考えられたか? ここにリンゴの秘密があるんだ。リンゴを2つに切ってみると、わかる。[袋から、果物ナイフを取り出す。](何人かの生徒「あぶない」)リンゴを2つに切ってみると、すごいことわかるからね。誰か切ってくれる人、いる? じゃ、□□さん。前に来て、切ってみて。(前に出てきた□□さん、教卓に敷いた新聞紙の上で、リンゴを切ろうとする。)あっ、ちょっと待って。普通はそう切るけど、今日はこういう風に輪切りにしてみて。(□□さん、危なっかしい。)はい、じゃ、どうもありがとう。手、切るとたいへんだから、先生、切ってみるね。ちょっと、切りづらいんだ。[リンゴを切る。] 

【イヴの食べたリンゴ(その2)】 、授業観については 【授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】