世界史ミニ授業(総合)【オリエントとは】

★今日から、古代オリエントに入ります。まず、このオリエントっていう言葉なんですが、もともとはこういう意味です。[板書:Orient =日の昇るところ(東方)]これの形容詞の形がオリエンタルだよ。聞いたこと、あるでしょう。(何人かの生徒、うなずいている。)「オリエントの」っていう意味になる。

 じゃ、オリエントって、どのあたりなのか。それをしっかり押さえようね。まず、オリエントに含まれる地方を書いてみるね。[板書:小アジア、シリア、パレスチナ、エジプト、メソポタミア、イラン、アラビア]…書いたかな。これから、地図配るから、この7つの地方をマークしてみてください。[古代オリエントの地図と現在の国々の地図を上下に印刷したプリントを配付]上の地図でマークね。ちょっと見づらいかも知れないから、よーく見て、見つけて。…難しいかな。[巡回しながら]えーと、エジプトとメソポタミアはすぐ見つかるね。エジプトの右上、北東を見ると、小さくパレスチナって書いてあるね。わかった? これ、重要なところだからね。で、パレスチナの北がシリア。シリアの左側の方、西側に小アジア、大丈夫? [巡回しながら個別にアドバイス]うん、そうだね。…小アジアはここだよ。。[再び全体に対して]ここが昔はアジアって呼ばれた。今は範囲が広がったから、「小」をつけてるんだけど。それから、メソポタミアの東の方、右の方がイラン、わかった? あとメソポタミアの南の方、見て。アラビア。…OKかな。それと、海を一つだけマークしておこう。地中海を見つけて、マークしてね。そうすると、オリエントは地中海の東側だっていうこともわかるね。

 今度は、地図でマークしたところは、今は何ていう国になってるか、見ていくよ。ちょっと紛らわしいかも知れないけど、今度は、現在の国名を書いてくよ。プリントの下の地図見ながら、書いてね。[板書:小アジアのところに(現トルコ)と書き始め、アラビアのところまで現在の国名を書く。]それで、パレスチナのところに2つの国書いたんだけど[(現イスラエルパレスチナ)]、これ、ちょっと微妙なんだ。地図にはイスラエルしか書いてないんだけど、パレスチナも一応書いておきます。今は説明しないけど、現代でまた出てくるから。じゃあ、ここまでのまとめね。オリエントって言う場合、この7つの地方を指すんだよ、これは地方名ね、そして、現在ではこういう国々がそこにできてるよ、っていうことね。ここまでいいかな。下の地図の国名、マークしておくか…。はい、マークしてみて。…大事なこと、一つ忘れてました。ここはね、現在は、イスラエルを除いて、イスラームの国々。[板書:イスラームの国々(イスラエルを除いて)]イスラーム化した歴史も、後でやるからね。これもまた、面白いんだ。

 それじゃ、オリエントっていう言葉に戻るね。これはね、もともと、オリエンスっていう言葉から来たんだって。[板書: orienns (ラテン語)]ラテン語については、また後でやるけど、ローマの人たちの言葉だった。[板書:ローマ人の言葉]つまりね、これから言うこと、大事だからね、オリエントっていうのはローマから見て日の昇る方、東の方っていうことだったんだ。[板書:ローマから見て東]ローマっていうのは、大帝国を築くんだけどね。はい、今度は、教科書の一番後ろの世界地図見てみましょう。さっきプリントでマークした国々、いいね。その西の方、左の方、見て。イタリアがあるね。ブーツ型の国。そこに、昔、ローマっていう国があったの。だから、オリエントは東の方になるよね。(生徒たち、ようやく納得した様子。)

 当たり前なんだけど、どっかに基準のところがあって、そこから東とか西とか言うわけだね。それで、その基準になるところが強い国だったりするわけだ。ローマ帝国みたいなね。ここまでわかると、これから話すこともわかるよ。それでね、このオリエントは、19世紀からは「中東」とも呼ばれるようになるんだ。厳密に言うと、オリエントよりもう少し範囲が広がるんだけど。「中東」って聞いたことある? 「中東問題」っていう言葉もあるね。(何人かの生徒、うなずく。)英語では、ミドル・イースト。[板書:19Cからは「中東( Middle East )」とも呼ばれた]「中東」って、何か変な感じの言葉だけど、中ぐらいの東のところっていう意味ね。中国とか日本は、もっと東だから。この時基準になった国が、はい、これ、ものすごく重要、イギリス! [板書:イギリスから見て,19Cはイギリスの最盛期]…教科書の世界地図、もう1回見てみよう。イギリスの場所わかるよね、イギリスから見て東、「中東」。インド、中国、日本なんかは、もっと東ね。

 まとめます。オリエントとか「中東」っていう言葉は、基準になるところがあって、使われた。ローマもイギリスも強い国だった。地方の呼び方にも、その時の歴史的な力関係が表れてるんだね。[板書:歴史的な力関係]

 以上、大きくオリエント、中東を見たので、次に古代のメソポタミア文明に入っていきます。

※通常の「古代オリエント」の導入とは異なっているかと思います。現代までの視野を持ちながら「古代オリエント」の学習に入っていくという考え方をとっています。

※最近の生徒たちは一般に世界地理の知識が乏しく、地図の苦手な生徒が多くなっています。国際ニュースがこれほど流れていていても、外来語がこんなに溢れていても、英語という外国語を勉強していても、意識は必ずしもグローバル化していないことが多いのです。危機感さえ抱くのは、私だけではないと思います。

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