世界史ミニ授業(古代)【ブッダはこう考えた(その2)】

★「ブッダの考え方」の二つ目にいきますね。ブッダはこう考えた。[板書:②すべてのものは変化してやまない]あらゆるものは変化するっていう、この考えを、中国では四字熟語で表して、それが、日本にも伝わった。[板書:=( )( )( )( )]…はい、何ていう言葉でしょう? ちょっと、考えて。…この言葉、多分みんな中学校の時習ったと思うよ。国語の時間に。…○○さん、どう? (○○さん「…わかりません」)そうか、じゃ□□さん。(□□さん「…せんぺんばん」)え? もう1回言って。(「せんぺんばんか」)これか。[板書:千変万化](□□さん、うなずく。)そうか、んー、惜しい。えーとね、千変万化は、あることがいろいろに変化すること。ここは、すべてのものが変化すること。(□□さん、うなずいて納得している。)でも、よく考えて、言ってくれたね。…さあ、どうかな、難しいかな? △△さん。(△△さん「諸行無常」)そうなんです! 良かった! 知ってる人がいて。[板書:諸行無常

 それでね、この四字熟語は、日本の有名な古典の書き出しの部分に使われた。[板書:cf 鄯『平家物語』の冒頭の部分]どういう書き出しだったか、覚えてる? (○△さん「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」)そうです! すばらしい。祇園精舎の、祇園精舎ってインドのお寺の名前ね、「祇園精舎のゴーンていう鐘の音は、すべてのものは変化していくって感じさせる響きだなあ」ていう意味だよ。諸行無常っていう言葉が、日本人に大きな影響を与えたことが、わかるね。きれいな花も、しおれて落ちる、平家のように、盛んだったものも滅びる…。いいね、二つ目の考え方、すべてのものは変化してやまない。

 ところがね、世界にはいろんな考え方があるんだね。[板書:cf 鄱反対の考え方もある。「永遠に変わらないものが存在する。」]すべてが変化するっていうことはない、永遠に変わらないものがあるって言うんだ。こういう考え方を持った代表的な人はね、[板書:古代ギリシアの哲学者プラトンプラトンていう人。ギリシアについては、後でやるからね。どうでしょう、みんな、どっちの考え方に賛成する? …今急にきかれても困るかも知れないけど、…何人かにきいてみるか。…○□さん。(○□さん「諸行無常」)そうか、じゃ△□さん[と、10人ぐらいにきいてみたら、3対7で、プラトンに賛成する生徒が多かった。]すべてのものは変化するか、永遠に変わらないものがあるか、これ、大問題だね。また、後で考える機会があります。

 じゃ、ブッダに戻るよ。三つ目の考え方。[板書:③苦しみの原因は煩悩にある。]この漢字、読めるかな? (何人かの生徒「ぼんのう」)そうだね、「ぼんのう」。「はんのう」とか読まないでね。煩悩っていうのは、[板書:欲望、執着心、怒り、憎しみ、恨み、妬みなど]こういうものを言ってるんだね。ブッダは、こういうものを人間は持ってる、これが現実だ、こう考えているみたいなんだ。私なんか、煩悩の塊だね。(生徒たち、黙って聞いている。どう思っているのだろう?)「人間はみんなきれいな心を持っています」みたいな、きれいごとは言わないんだね。人間の現実を直視している。ただね、生きるっていう意欲まで否定してるんじゃないんだよ。「このように生きよ」みたいな言い方で、いっぱい言ってる。煩悩っていうのは、[板書:苦しみを生む欲望、自分や他を害する負の感情]こういうものなんだね。また、煩悩を炎にたとえてる。うまい表現だね。めらめらと燃えるような感じかな。(少し笑っている生徒、何人かいる。)そこから、さらにお釈迦様は考えた。[板書:煩悩の炎を消すことが理想、そのための修行(八正道)]「煩悩の炎を消すこと」を[板書:解脱]この言葉で表した。読み方、大丈夫? ○■さん、何て読む? (○■さん、「げだつ」]そうだね、これ、すごいと思うね。「解き、脱する」ね。克服するとか、打ち克つとかじゃないんだね。八正道は、八つの正しい修行方法ね、詳しくは説明しないけど。ただ、われわれのような、修行者じゃない普通の人間は、煩悩をコントロールしながら生きるしかない。それで、一般の人には「五戒」っていうことを言ってる。一応言うよ、「殺してはいけない、盗んではいけない、ウソをついてはいけない、不倫してはいけない、酒を飲んではいけない」、この五つね。(生徒たち、一生懸命メモしている。)

 欲望をどう考えるかって、難しいね。特に現代は、欲望を肯定し刺激する社会になってるから。でも、仏教って、決して古くさい宗教じゃないってことは、わかった? (2・3の生徒は、うなずいていた。)はい、じゃ、ブッダの考え方の四つ目。もっとあるんだけど、四つだけにしておくね。[板書:生きとし生けるものへの愛情を]「生きとし生けるもの」ってわかる? [板書:(命あるすべてのもの)]だから、人間だけじゃないよ、動物もね。家にペットいる人は、この感じ、わかるでしょう。植物もかな? お坊さんたちの間で議論があって、植物もっていうことになったらしい。(教卓のそばにおいてある鉢植えの花を見つけて)なんか、この花、かわいそうだね、だれか世話してる人? (生徒たち「先生」)えっ、「生きものがかり」いないの? みんなの愛情、足りないんだよ、これ、元気ないもの。(生徒たち、笑っている。)私も、家で花とか育ててんだけど、花に話しかけてんの。(生徒たち、笑っている。)そうすると、花も嬉しいみたいだよ。はい、いい? 生きとし生けるものへの愛情。で、これを、仏教では、中国に伝わって、漢字二字で表した。[板書:慈悲]これが、すばらしいんだ。煩悩にまみれた者にも、愛情を持って接するんだね、お釈迦様は。この慈悲については、大乗仏教のところで、もう一回やります。

 大分時間とったんだけど、今までよりは、少しは仏教についてわかったんじゃないかなって思います。

※その1・その2で、50分授業2コマ分です。「縁起」などについては、触れることができませんでした。

※あまり時間はとっていませんが、比較するという作業を、意識して行っています。「すべてのものは変化する」と「永遠に変わらないものがある」については、定期考査の中で、自分の考えを述べてもらうことにしています。プラトンの「永遠に変わらないもの」とはイデアのことですが、ここではイデアという語は出していません。

【ブッダはこう考えた(その1)】

→ 初期仏教教団の性格については、【ゼロの発見】で触れています。

→ インドにおける仏教の消滅については 【仏教がインドで消滅したのは】

→ 授業観については 【授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】