復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(近世)【明代後期の経済と16世紀の世界】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》

●明代後期(16世紀後半)には海外貿易が活発化した。( ア )がマカオに居住権を獲得し[1557]、( イ )がフィリピンにマニラを建設した[1571]のも、この時期である。( ア )は日本との貿易を活発に進め、( イ )はメキシコのアカプルコとの間で太平洋をまたぐ貿易を展開した。明の海外貿易活発化とともに、長江下流域では( ウ )・絹織物・( エ )器などの手工業製品の生産が盛んとなった。これらは( ア )・( イ  )を通じてヨーロッパや日本に輸出され、その対価として流入したメキシコ( オ )・日本( オ )が、中国経済にとって欠かせないものとなった。


《授業との関連》

★明代後期の経済発展と海外貿易の関連を総合的に確認できるようにするための問題です。

★一条鞭法の実施や穀倉地帯の長江中流域(湖広地方)への移動も、この復習問題のような視野の中で理解できるように努めています。

★明代後期の経済発展の授業は、教える側にとっても、世界史を各国史の寄せ集めではなく、まさに世界史として、グローバル・ヒストリーとして展開できるかどうかの試金石となっています。具体的には、16世紀の大交易時代と明後期の経済の関連をどう取り上げるか、という課題になります。

★高校世界史の中で「銀による世界の一体化」という見方は、かなり定着してきました。ただ、高額商品の銀による購入や銀による納税、銀塊と鋳造貨幣両方の流通などは、なかなかイメージしにくく、授業でも苦労するところです。


《教科書との関連》

◆教科書の構成は各社とも試行錯誤のあとが見られますが、16世紀の大交易時代と明後期の経済の関連という点では、<山川(新)>が最もすぐれています。「第Ⅲ章近世」の初めに「第10章 大交流・大交易の時代」をおき(ポルトガル・スペインの進出、大西洋奴隷貿易まで含んでいます)、そのあとすぐに第11章で明、東アジア・東南アジア、清の学習に入っています。

◆「アジア諸地域の繁栄」で明・清・オスマン帝国サファヴィー朝ムガル帝国などを学習した後、大航海時代に入るという伝統的構成[<山川(詳説)>、<帝国>]では、なかなか16世紀の世界の姿にアプローチできないと思われます。<東書>・<実教>も配列の工夫はしていますが、<山川(新)>ほどには整理されていないようです。

◆なお、<帝国>は明の学習の後に「世界をめぐる銀」というテーマ史をおき、16〜17世紀を中心に銀の役割を詳しく解説しています。また<東書>も大交易時代の最後に「銀・ドル・円」というコラムをおき、20世紀前半までの東アジアの交易体制を解説しています。


※復習プリントの基本的考え方については → 【復習プリントと世界史Bの授業づくり】