復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(古代)【ヘレニズムとイラン系国家】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》  *はやや難

アレクサンドロス帝国は分裂し、西アジア中央アジア南部は( 1 )朝によって支配された。しかし、(2)【 前4世紀半ば 前3世紀半ば 】には、アム川上流域のギリシア人総督が独立して( 3 )を建てた。続いて遊牧イラン人族長*( 4 )も、*( 5 )海東南部にパルティア[中国名*( 6 )]を建てた。
●パルティアは、やがて( 1 )朝からメソポタミアを奪い、ティグリス川東岸の( 7 )に都を定めた。パルティアの繁栄は、東西交易路を押さえていたためである。前63年( 8 )が( 1 )朝を滅ぼすと、パルティアは( 8 )とたびたび争うようになる。パルティアは( 1 )朝以来のヘレニズム文化を受け継いでいたが、前1世紀から( 9 )語が公用語となり、ギリシア文化圏から離れていった。
●( 3 )のギリシア人はイラン系の人々を支配していたが、前2世紀半ばに衰え、代わって( 10 )国ができた。まもなく、この国を前漢・( 11 )の使者・張騫が訪れた。後1世紀に入ると、( 10 )から自立したイラン系*( 12 )人が西北インドに進出し、*( 12 )朝を建てた。

※解答
 1 セレウコス   2 前3世紀半ば   3 バクトリア   4 アルサケス
 5 カスピ   6 安息   7 クテシフォン   8 ローマ   9 ペルシア
   10 大月氏   11 武帝   12 クシャーナ


《授業との関連》

★この部分の授業はなかなか難しく、生徒たちも理解するのがたいへんです。授業では簡単に済ませてしまう傾向があると思いますが、それは適切ではありません。

★まずヘレニズム時代の授業で、次のことが確認されている必要があります。
 ①アレクサンドロス軍がアム川上流域まで侵攻し支配したこと。
 ②西アジア一帯に、ギリシア語の行政・外交文書、貨幣、図像などが、かなりの程度広まったこと。
 ③多数のギリシア人が西アジアに移住したこと。また、各地にギリシア兵の軍団が駐屯し続けたこと。

★①・③の理解なくしてはバクトリアの独立を理解できませんし、②の理解なくしてはパルティア前半のヘレニズム文化継承が理解できなくなります。

バクトリアはヘレニズム王朝の一つと位置づけた方が、理解しやすいと思います。ただ、授業では詳しく触れていませんが、イランやメソポタミアの文化の影響も無視できないようです。この文化的複合性は、後のクシャーナ朝の性格を考える上でも、重要です。

★やや細かいことですが、パルティアがおこった場所を確認しています。(イラン人最初の国家メディアもほぼ同じ地方からおこっています。)ササン朝の問題文は割愛していますが、ササン朝がおこったイラン高原南部(アケメネス朝と同じ)と比較しています。このことは、「ペルシア」という名称の理解にも関わってきます。

イラン系の人々の居住範囲が、イラン高原からカスピ海周辺、アフガニスタン北部、アム川・シル川流域、タリム盆地周辺までと、かなり広いことを、生徒たちに伝えておく必要があります。ゾロアスターの出身地も、カスピ海の東側と言われています。

バクトリア以後のアム川上流域の歴史を簡単に学習しておくことは大切です。後でクシャーナ朝を学習する時に役立ちますし、張騫の学習にも生きてきます。この地域は、生徒たちに馴染みがありません。ここでこの地域に注目させておくことで、ソグド人やトルキスタンの学習が少しスムーズになるかと思います。


《教科書との関連》

◆ローマの歴史の後に、パルティアとササン朝を位置づけている教科書がほとんどです。<山川(詳説)>のみがアケメネス朝から連続して記述していますが、少なくともヘレニズム時代を学習したあとでないと、パルティアとササン朝の理解は難しいと思います。

◆パルティアとササン朝については、<実教>の「イラン民族の国家」や<山川(新)>の「西アジアの諸王朝」のように、独立して扱うのが適切だと思います。<実教>の記述は、たいへんわかりやすいと思います。

◆<東書>がヘレニズム時代のところでバクトリアを記述しているのは、正しい取り上げ方です。ただ、「ユスティニアヌス時代の東ローマ帝国」と「パルティア、ササン朝、ペルシア文明」を一緒にする構成には、やや無理があると思います。パルティアからペルシア文明のかけての本文の内容は、とてもいいのですが。

◆大月氏クシャーナ朝の関係を明記しているのは、<実教>と<東書>です。どちらも、ていねいな記述です。


《参考》

加藤九祚シルクロードの古代都市』(岩波新書、2013)は、アイハヌム遺跡を詳しく紹介しながら、バクトリアグレコバクトリア王国)の実像に迫っています。


※復習プリントの基本的考え方については → 【復習プリントと世界史Bの授業づくり】