復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(古代)【アーリヤ人による先住民の征服?】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》 *はやや難

●前1500年頃から、( 1 )語系の牧畜民であるアーリヤ人が、( 2 )峠を越えて( 3 )地方に移住し、先住民と交わった。半牧半農の生活をしながら、やがて支配層を形成するようになったアーリヤ人は、自然神を崇拝し祭式をとりおこなった。これがバラモン教であり、神々への最古の讃歌集『( 4 )』が作られた。

アーリヤ人は、前1000年頃から( 5 )川流域へ進出した。*( 6 )作を開始し、森林を切り開くため( 7 )器を使用するようになった。この定住農耕社会で成立したのが、( 8 )と呼ばれる身分制度であった。

【解答】
1 インド=ヨーロッパ   2 カイバル   3 パンジャーブ   4 リグ=ヴェーダ   5 ガンジス   6 稲   7 鉄   8 ヴァルナ   


《授業との関連》

★私は、長い間、「アーリヤ人の侵入→先住民を征服・支配」という授業をしてきてしまいました。先住民との混血には触れてきたものの、ステロタイプ化した見方にとらわれて、教科書の記述も微妙に変化していることに気づかなかったのです。

★この反省を踏まえ、復習プリントでは、「パンジャーブ地方に移住し、先住民と交わった」、「やがて支配層を形成するようになった」という表現にしてあります。

★受験参考書・問題集も、「アーリヤ人の侵入→先住民を征服・支配」というパターンで書かれたものがたくさんありますので、注意が必要です。(新課程に対応して書き改められていくと思われますが。)


《教科書との関連》

◆「侵入」という表現を使った教科書はなくなりました。

 ○「パンジャーブ地方に進入しはじめた」<山川(詳説)>
 ○「アーリヤ人が移住してきた」<東書>
 ○「パンジャーブ地方に来住した」<実教>
 ○「南アジアに移住してきた」<山川(新)>
 ○「数回にわたってインドに進出し」<帝国>

◆しかし、「征服」という語は、まだ使われています。

 ○「彼らは二輪の戦車を駆使して先住民を征服していった」<東書>
 ○「二輪戦車を駆使して先住農耕民を征服した」<実教>
 ○「彼らは先住民社会を征服し」<山川(新)>
 ○「先住民を征服しつつパンジャーブ地方に定着して」<帝国>

アーリヤ人の移動をストレートに征服活動(軍事的制圧)に結びつけるのは疑問です。少なくとも、もう少し複雑な対立と交流のプロセスを考えるべきかと思います。

◆この問題は、もしかしたら、微妙に歴史観に関わっているかも知れません。ゲルマン人の移動と王国建設を征服と表現することはありません。一方で、アレクサンドロスの明白な征服活動は、「東征」という語を使っている場合でさえ、オブラートに包まれてしまいます。

◆<山川(詳説)>のみが、「征服」という語を慎重に避けています。復習問題は、<山川(詳説)>に基づいて作成しました。

 ○「アーリヤ人は、移動した土地で先住民とまじわって農耕技術を学び」
 ○「アーリヤ人と先住民がまじわって社会が成立する過程で」


※復習プリントの基本的考え方については 【復習プリントと世界史Bの授業づくり】