復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(先史・古代)【東南アジア史への導入】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》 *はやや難

①東南アジアは、( 1 )半島を中心とした大陸部と( 2 )半島から現在のインドネシアや( 3 )を含む諸島部からなる。東南アジア世界は、早くから外の世界と繋がり、( 4 )や中国、ついで( 5 )教徒の影響を受けながら、独自の文明を築いた。

②<ドンソン文化の問題は略>

③前2世紀末、( 6 )の武帝が*( 7 )[中心はのちに広州と呼ばれる都市]を滅ぼして南海郡をおき、ベトナム北部には交趾郡、ベトナム中部には*( 8 )郡をおいて、南海貿易の拠点とした。こうして、ベトナム北部には、漢字や儒教が伝わった。

④紀元前後、中国商人は東南アジアを経て南インドまで行っていた。東南アジアは、中国とインドを結びつける役割を果たしたのである。南インドはローマと交易していたので、ここに「( 9 )の道」がひらけることとなった。この「( 9 )の道」を通って、2世紀半ば[中国の王朝は( 10 )]、ローマ皇帝( 11 )の使者を名のる者が日南郡にやってきた。

海上交易が発展すると、沿岸部には、港町を基盤とする*( 12 )国家が生まれた。<以下の、扶南とチャンパーの問題は略>

⑥4〜5世紀からは、広い地域で「インド化」と呼ばれる動きが起き、インドの( 13 )朝の文化が流入した。( 14 )教や大乗仏教、( 15 )語などが積極的に受け入れられた。支配者である王はシヴァ神や*( 16 )神あるいはブッダと同一視され、独特の王権概念が生まれた。

【解答】
1 インドシナ   2 マレー   3 フィリピン   4 インド   5 イスラーム   6 前漢   7 南越   8 日南   9 海   10 後漢   11 大秦王安敦   12 港市
  13 グプタ   14 ヒンドゥー   15 サンスクリット   16 ヴィシュヌ


《授業との関連》

★①の授業の前に、現在の東南アジアの国々とその位置を、白地図で確認することにしています。生徒たちは東南アジアについての知識も関心も乏しく、どういう国がどこにあるのかわからない場合が多いからです。たいへん残念なことですが、東南アジアの場所さえわからない場合があります。(日本の社会科教育の深刻な問題と言えると思います。)

★このような現状ですから、授業では、東南アジアに関する①のような概観は欠かすことができません。(ア)のインドシナ半島については、「歴史的にインドとシナ(中国)の影響を受けた半島」という説明をしています。「シナ」が中国を指すことは、説明しないと、現在の生徒にはわかりません。なお、「インドシナ」という語については、19世紀の「ヨーロッパ諸国による東南アジアの植民地化」でもう一度触れる必要があります。そもそもは、19世紀にフランス人が使い始めた語だからです。

★②のドンソン文化の復習問題は省略していますが、根栽農耕と稲作にも触れています。

★③の内容を東南アジア史の導入部の授業で取り上げるかどうかは議論の分かれるところでしょうが、私の経験では、取り上げた方が理解が深まると思います。「インドシナ」という語の由来について、具体的に理解できるからです。また、後の李朝の成立の理解のためにも、欠かせません。前漢の授業でも、再度取り上げて確認しています。

★③では、あえて広州という地名を出しています。ここの授業で広州を出しておくことによって、唐における市舶司設置がスムーズに理解できるようになります。

★「海の道」を取り上げることは、必須です。授業では、やや回りくどいのですが、④のように教えています。この内容は、⑤の港市国家の理解に、扶南とチャンパーの理解に直接つながります。

★「インド化」については、授業で簡単に触れる方が多いかも知れませんが、しっかり押さえておく必要があります。「インドシナ」という語の理解に関わるだけでなく、後のアンコール・ワットの理解の前提になるからです。


《教科書との関連》

◆①のような概観を簡潔にわかりやすく述べているのは、<山川(詳説)>です。<東書>の説明はていねいなのですが、薄い青緑色の地に文章が書いてあるせいもあり、必ずしもわかりやすいとは言えません。

◆③の内容をきちんと記述しているのは<東書>のみで、復習問題は<東書>の本文を参考にしています。ただ<東書>の場合、前漢のページでの武帝の記述は簡単過ぎます。

◆「海の道」について最も明解に記述しているのは、<東書>です。前漢武帝ベトナム進出の後に書かれています。<山川(詳説)>は、南インドのところでていねいに記述しています。<実教>は記述がやや簡単で、「海の道」という語も太字になっていません。<帝国>は、本文とコラムで記述しています。<山川(新)>は第Ⅲ部近世の始めで取り上げていますが、この取り上げ方は少々疑問です。

◆「インド化」について詳しく取り上げているのは、<実教>です。「インド化」の注やコラム「東南アジアの王権」は、たいへんすぐれた内容だと思います。

◆<山川(新)>の古代東南アジアの記述は驚くほど簡略で、他の地域・時代の記述と比べ、余りにもバランスを欠いています。


※復習プリントの基本的考え方については → 【復習プリントと世界史Bの授業づくり】