復習プリントから考える世界史Bの授業・教科書(先史・古代)【東アジア史の風土的枠組み】

《復習プリントから(基本事項を確認し、流れをつかもう)》  *はやや難

黄河流域一帯を華北と呼び、長江流域一帯を華中と呼ぶ。また、特に長江下流域を( 1 )という。華北と華中の境は、秦嶺山脈と*( 2 )を結ぶラインで、このライン以北は畑作地帯である。一方、長江流域以南は湿潤で( 3 )作に適している。( 3 )作地帯は、朝鮮半島・日本列島へと連なった。
華北の北方から北西にかけては( 4 )民の暮らす草原地帯が広がり、東北の森林地帯では狩猟民が暮らしていた。また、西方の乾燥地帯には水を利用できる( 5 )が点在し、交易の拠点ともなった。( 5 )が点在する地域の南には広大な( 6 )高原が広がり、牧畜が行われた。
●中国の歴史は、<華北の農耕民と( 4 )民・( 5 )民・狩猟民との関わり>という軸に、<華北と( 1 )の関わり>という軸が加わって展開した。

【解答】
1 江南   2 淮河   3 稲   4 遊牧   5 オアシス   6 チベット


《授業との関連》

★生徒たちが東アジアの風土的多様性をほとんど理解していないこともあり、中国の歴史に具体的に入る前に、東アジアを大きく風土的に理解しておくことが欠かせません。

★進度を気にするあまり、すぐに黄河文明長江文明に入ると、結局後で苦労することになると思います。

★授業では、松田壽男の図(『アジアの歴史』)をベースに、農耕世界Ⅰ(華北)・農耕世界Ⅱ(華中)・遊牧世界・狩猟世界・オアシス世界を図で表しています。

★<秦嶺‐淮河線>はとても重要で、後の金と南宋の国境の理解にも役立ちます。なお授業でも触れますが、問題文の稲作は水稲耕作を指しています。

★江南という地域名は魏晋南北朝以降出てきますが、導入の時点でも触れておいた方が良いと思います。

★<華北の農耕民と遊牧民・オアシス民・狩猟民との関わり>という軸に、<華北と江南の関わり>という軸が加わって展開する中国史のダイナミズムを、あらかじめ知らせておくようにしています。


《教科書との関連》

◆各教科書とも風土的概観を行っていますが、<実教>の記述が最もていねいです。<秦嶺‐淮河線>の重要性を指摘しているのは、<実教>と<帝国>です。

◆風土的概観を述べた文章でチベットに触れている教科書は、残念ながらありません。

◆東アジアの地勢を表した地図は、<実教>と<東書>が見やすいと思います。両社とも、華北・華中・華南の表記がありますが、<東書>の華南の位置が少し北にずれています。

◆<山川(詳説)>と<山川(新)>は、地勢図に遺跡を書き入れていて利用価値があります。ただ、華北・華中などが小さく表示されてしまいますので、地図を見慣れていないとわかりにくいかも知れません。

◆<山川(新)>は、中国文明に入る前に遊牧民とオアシス民について結構詳しく記述していますが、他の教科書のように、「中央ユーラシア」あるいは「内陸アジア」で詳しく記述するのが妥当だと思います。

※復習プリントの基本的考え方については ⇒ 【復習プリントと世界史Bの授業づくり】