世界史ミニ授業(古代)【「マルコ福音書」のイエス】

★『新約聖書』に入ってるいろいろな文書は、1世紀半ば頃から書かれて、2世紀末にはほぼ現在の形に近くなった。2世紀末ってことは、ローマのどういう時代? 五賢帝の時代が終わった頃だね。(生徒たち、うなずく。)五賢帝の最後は誰だっけ? (生徒たちの多くが「マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝」)そうだね。そういう時代に、パックス・ロマーナの時代に、弾圧を受けながら『新約聖書』が少しずつ整備されていったんだね。最終的に現在の形にまとめられたのは、4世紀半ば過ぎなんだって。イエスが死んでから、300年以上経ってるんだよ。

 それでね、『新約聖書』の中で、イエスの生涯を書いた部分を「福音書」と言います。[板書:「福音書」]ほかに使徒たちの言葉なども入っているんだけどね。あ、読み方、大丈夫かな、「ふくいん」ね。[板書:よみがなをふる]「喜ばしい知らせ」という意味らしい。『新約聖書』はギリシア語で書かれたんだけど、これについてはまた後でやりますけど、「福音」とか「福音書」って、ギリシア語で何て言うと思う? 実は、みんな、聞いたことあるんだよ。[板書:福音=エウァンゲリオン(ギリシア語)](生徒たち、呆気にとられている。)アニメのタイトルでは濁って発音してるけどね。こういうところが、世界史はおもしろいね。だから、世界史の教員やめられない(生徒たち笑っている)。

 「福音書」、イエスの伝記ね、これを4人の人が書いてる。[プリントを渡す。]少しずつ違いがあるんだけど、一番最初に書かれたのが「マルコによる福音書」。60年頃らしい。それでも、イエスが死んでから30年は経ってるんだけど。それでね、この「マルコによる福音書」が歴史的事実に一番近いかも知れないから、この福音書に書いてあることでやるよ。[板書:イエスの生涯(マルコ福音書)]

 それでは、今度は資料集、見てみましょう。簡単にイエスの生涯が書いてあるね。(少し説明した後)[板書:イエスは、貧しい人たちのために活動した]ところが、貧しい人たちを軽蔑していたユダヤ教の偉い人たちと対立が深まっていく。[板書:ユダヤ教パリサイ派パリサイ派っていうのは、ユダヤ教の中でも厳格な人たち。貧しい民衆は、生活がたいへんで、病気にもなるし、ユダヤ教の規則が守れないんだね。でもイエスは、そういう人たちのことをこそ、神さまは考えてくれているって言ったから、貧しい人たちから熱狂的な支持を受けた。(この後、ユダの裏切り、ペテロの否認などを話す。レオナルドの「最後の晩餐」も見る。裏切りの話は、なぜか、生徒たちを惹きつける。)

 みんな知ってるように、イエスは十字架に磔になって殺されるんだけど、息をひきとる直前に言った言葉が残ってる。マルコが書き残してくれた。イエスアラム語っていうことばで言ったんだけど、アラム語については、深入りしないでおくね。…さあ、イエスは、亡くなる直前、何て言ったでしょう? 次の3択から選んでください。みんなは、まだ書かなくていいよ。[以下を板書]

 ①わが神、わが神、私は救世主として立派に死んでいきます。
 ②わが神、わが神、私を殺す者たちをお許しください。
 ③わが神、わが神、どうして私をお見捨てになったのですか。

少し考えてみて。(1分ほど考えてもらう。)…イエスの最後の言葉だよ。(生徒たち、真剣に考えている。)…いいかな、じゃ、手を挙げてもらうよ。それでは、①番だと思う人、あ、少しいるね。次に、②番だと思う人、んー、圧倒的に多いね。じゃ、③番だと思う人。③番の人も、少しいるね。さあ、どうでしょう、正解は、…③番です。(生徒たちの驚き。)キリスト教の教えから言うと②番だって思ったんだろうね。③番て考えられた人は、すごいよ。じゃ書いてね。[板書:イエスの最後の言葉「わが神、わが神、どうして私をお見捨てになったのですか。」]

 この言葉、みんなが持っていたイエスのイメージと違ったかも知れないね。なんか、キリストっていうよりも、一人の人間としての叫びっていう感じだね。(生徒たちは、シンとしている。) 

→ 授業観については 【授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】

→ 関連テーマ 【イエスは、アラム語で民衆に語りかけた】