世界史ミニ授業(中世末期)【ルネサンスの始まり】

★今日からルネサンスに入るかと思うと、なんかドキドキします。それだけ魅力的なんです。[板書:ルネサンスの始まり]それで、近世(近代前期)の始まりのところでルネサンスをやるわけなんですけど、実際は、ルネサンスの始まりは、中世末期のイタリア、14世紀のイタリアにあります。中心都市はフィレンツェ。[板書:14Cのイタリア、フィレンツェフィレンツェが中心になった理由は、後でやります。

 まず、簡単な年表を書いてみるね。[以下を板書]

  1303 (  a  )事件
  1304 ペトラルカ誕生
  1307 ダンテ、『神曲』の執筆開始
  1321 ダンテ死去
  1348 (  b  )流行のピーク
  1353 ボッカチオ『デカメロン』完成

(生徒たちが書き終えるのを待ってから)はい、14世紀です。ルネサンス初期の重要人物ダンテ、ペトラルカ、ボッカチオを書きました。空欄には何が入るかな? ちょっと考えてみて。…aは前に教皇権の衰退のところでやった事件。(ある生徒「アナーニ事件」)そうだね。すばらしい。そしてbは流行って書いてあるから、わかると思うんだけど。(生徒たち「ペスト」)そうです! これで、ルネサンスは、14世紀、つまり中世末期に始まったことが、はっきりわかるね。

 ちょっと付け加えると、アナーニ事件の教皇ボニファティウス8世、覚えてる?(生徒たち、うなずく。)教皇ボニファティウス8世、メモしといてね。ダンテは教皇ボニファティウス8世とまさに同じ時代の人だってわかるね。(生徒たち、うなずく。)これは、確実に覚えておいてね。それと、イタリアでの皇帝派(ギベリン)と教皇派(ゲルフ)との対立、覚えてる?(生徒たち、戸惑う。)ちょっと複雑だから詳しく言わないけど、ダンテは教皇派(ゲルフ)だったんだけど、教皇ボニファティウス8世と対立するグループに属してた。それでフィレンツェを追放されたんだ。ペトラルカのお父さんもダンテと同じく追放された。ペトラルカは、イタリアと南フランスを行き来しながら、『叙情詩集』を著すことになる。

 それで、ダンテはそのあとあちこちに住んで、お墓はラヴェンナっていう町にあるんだって。これは難しいかも知れないけど、ラヴェンナって、今まで2回出てきたんだけど、わかる? (生徒たち、沈黙。)じゃ、簡単に振り返っておくよ、まずビザンツのところで、ユスティニアヌス帝の有名なモザイク画があったところ、それからピピンの寄進の教皇領のところ。思い出しておいてね。アドリア海に面した港町。一回ラヴェンナに行ってみたいんと思ってるんだけど、…ちょっと無理かな。

 教科書にジョットという人、出てるね。画家のジョットは、ダンテと同じ時代のフィレンツェの人だからね。「板書:画家ジョット」ルネサンス初期の重要人物の4人目。…このジョットの絵を見てもらうか。[絵を見せる。]私、この絵、すごく気に入ってるの。なんか考えてるポーズだね、もの思いに耽ってるのかな。これは誰でしょう? ジョットは誰のことを描いたか? これ、前に授業でやった人なんだ。どう? (生徒たち、沈黙。絵だけで判断するのは難しい。)えーとね、ヒントね。「アッシジの」を付けて覚えてねって言ったんだけど、(生徒たち、まだピンとこない。)托鉢修道会を始めた人、んー、出てこないか。じゃあね、教科書の○○ページ見て。思い出したかな? 聖フランチェスコね。ジョットは、それからダンテも、聖フランチェスコをとっても尊敬してたんだ。ジョット、ダンテの、ちょうど100年ぐらい前の人。

 ダンテに戻ると、ダンテの『神曲』はすごく有名だね。「神の歌」という意味だよ。地獄篇・煉獄篇・天国篇に分かれてるんだけど、キリスト教の世界観で書かれてるのは、理解できるね。ただ、それだけじゃない。私は地獄篇しか読んだことないけど、読んでみると、すごいんだ。地獄の様子もだけど、そのラテン的教養が。たとえばね、ダンテは、ウェルギリウスに導かれて地獄を巡って歩く。…、ウェルギリウスって誰だっけ? どこでやった?(ある生徒「ローマ」)そう、すばらしい! 『アエネイス』を書いた人だったね。ダンテには、ローマ最盛期への憧れがあるんだ。それから、この『神曲』はトスカナ語という言葉で書かれた。これ、ものすごく重要。[板書:トスカナ語]なぜ重要かは、あとでまとめて話すからね。キリスト教、ラテン文化(ローマ以来のね)、トスカナ語、この三つの要素でダンテを考えておいて。

 じゃボッカチオにいくよ、ボッカチオの『デカメロン』は、これもトスカナ語で書かれたんだけど、[最初の年表を指して]ペスト大流行の直後に完成した。私は、最初の方を拾い読みしただけなんだけど、冒頭にペストのことが書いてあって、やっぱりひどい状況なんだね。お墓が足りなくて、教会の墓地に深い穴が掘られて、何百という遺体が投げ込まれたなんて書いてある、投げ込まれただよ。ボッカチオは、キリスト教の世界観から少し離れて、人間の欲望をありのままに描いてる。ここに注意してね。なお、『デカメロン』って変わった題名だね。「どんなメロンなんだろう」なんて考えないでね。十日物語っていう意味なんだって。「デカいメロン」のことじゃないからね。(生徒たちの笑い)

 それでね、ペスト大流行から1世紀近く経つと、15世紀前半だね、まさにルネサンスルネサンスらしくなって、華やかさを増してくる。フィレンツェでは、有名なサンタ・マリア大聖堂が、これは後でやります、サンタ・マリア大聖堂が完成する。ペストの死の淵から完全に再生するんだね。そして、みんなギリシア・ローマの古典に憧れる。ギリシア・ローマの文化も再生する。まさにルネサンスだ。[板書: Renaissannce =再生]英語の re- が付く単語と同じなんだね、「再び」っていう意味がある。ルネサンスのもともとの意味は「再生」ね。

 じゃ次は、15世紀のイタリア・ルネサンスです。


→ 世界史の授業全体については 【授業を考える(ミニ授業の公開にあたって)】

→ 関連テーマ 【激しい政争の後ダンテは】【新課程用教科書「世界史B」の検討①ルネサンス】