世界史ミニ授業(先史)【ネアンデルタール人(埋葬・花・謎)】

旧人の代表がネアンデルタール人です。[板書:ネアンデルタール人ネアンデルタールは、ドイツの地名です。少なくとも20万年前には、ヨーロッパから西アジアに住んでいた。一部は中央アジアにも。剥片石器、資料集見てみて、剥片石器という進んだ石器で毛皮を裂いていた。それを服にしてたんだって。[板書:剥片石器]原人までは服着てないらしいよ。

 もう一度資料集を見てみて。脳の大きさはどう? (生徒たち「大きい」)そうだね、新人と同じくらいか、少し大きい例もある。ただ、言葉は新人より話せなかったって言うんだ。原人のところで話したけど、口の中の構造や喉の構造から推測してるんだね。

 ネアンデルタール人の最大の特徴は[板書:死者の埋葬]死者の埋葬、これ、ものすごく重要。原人までは死者を埋葬してなかったっていうのも、不思議なんだけどね。イラクで発掘された遺跡にシャニダール遺跡というのがあって、死者に花を供えていたことがわかった。シャニダールね、そのうちどっかで目にするかも知れないよ。どうして花を供えてたことがわかったと思う? 数万年前だから、花の形は残ってないよ。(生徒たちのいろいろな答。)じゃ、ヒントね、土の中に何かが大量にあったんだって。(ある生徒「花粉」)そう! すばらしい。花粉が大量に見つかったんだって。顕微鏡で調べて、わかったんだね。人骨の周りの土から大量の花粉が発見されたっていうことは、そこにたくさんの花を置いていたとしか考えられない。周りに自然に咲いてた花とは違うってことだね。

 ネアンデルタール人は、死者を埋葬し、死を悼んで花を供えていた。われわれと全く同じだね。お葬式の時祭壇を花で飾ったり、棺に花を入れたり、お墓に花を供えたりしてるもんね。そう考えると、なんか、ネアンデルタール人が、すごく近くに感じられる。ネアンデルタール人から、死者を埋葬し花を供えることを始めた。北京原人とかは、そういうことはしてないんだね。死を悼む気持ちを、花で表すようになった。これ、すごいことだよね。そういう段階にまで、人の心は進化した。もしかしたら、死後の世界というようなことも考えていたかも知れない。[板書:花を供えた(心の進化)、「死後の世界」の観念?]

 ただね、ネアンデルタール人はすごく謎が多いんです。花を供えてたってことを否定する意見もある。最大の謎は、約3万年前に絶滅したということ。[板書:絶滅、なぜ?]絶滅だよ。なぜだかは、よくわかってない。絶滅したってことは、、ネアンデルタール人が新人に進化したんじゃないってことなんだ。新人は別にアフリカから現れたらしいんだ。だから、新人と共存していた時期があるんだって。ネアンデルタール人が死者を埋葬し花を供えていたとすると、それはどんな風に新人に受け継がれたんだろうね? …どうしてネアンデルタール人は絶滅したんだろうね?

 更にね、最近、ネアンデルタール人と新人が混血していたとも言われていて、ますます謎が深まってます。


◆多くの世界史の教員は、猿人の出現から新人まで、足早に駆け抜ける。この部分に時間を取ったら後が大変になるし、「センター試験にはほとんど出ないから」というのが、その理由である。しかし、本当は、それではいけないだろう。打製石器などの技術的進歩と「心の進化」は連動していた。人間の心はどう進化してきたのかという観点を持って、猿人から新人までを取り上げると、生徒たちはとても興味を持って聞いてくれる。この観点からは、死者の埋葬や芸術の始まり(洞穴絵画など)は、極めて重要である。

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