世界史 こんな「考える授業」をしてみました⑥【三権分立:生徒たちの誤解を解く】
◆18世紀のフランス啓蒙思想は、フランス革命やアメリカ独立革命を考えるうえでも、近現代の民主政治を考えるうえでも、大変重要です。
◆授業では、モンテスキューの三権分立論に一定の時間を割くようにしています。
◆10数年前、三権分立についての生徒たちの理解がきわめて不十分であることが分かって、愕然としたからです。
■まず三権とは何かを確認してから(この段階で躓く生徒も少なくありません)、次のような質問をすることにしています。
【問1】三権の「権」とは、何のことですか? 立法権・行政権・司法権の「権」とは、何のことですか?
★驚くのは、多くの生徒が、この場合の「権」を「権利」だと思っていることです。「権力」と答えられる生徒は、2〜3割でしょうか。「権力分立」という考え方が理解されていないのでした。
★したがって、現在の政治制度が歴史の中で形成されてきたことも、理解されてはいません。「公民」と「歴史」は分断されたまま、それぞれの領域で語の暗記が優先されてきた、と言っていいでしょう。
★この状況は、この10数年間変わっていません。日本の社会科教育、地歴・公民科教育の脆弱性を痛感させられています。
★なお、議会と立法権を結びつけられない生徒も、少なくありません。議院内閣制という日本のしくみ(あるいは行政権が大きくなっている現状)が、理解をあいまいにしている一因かも知れません。
★ただ、この点を明確に説明しておかないと、アメリカ合衆国憲法が理解できなくなります。
■三つの権力の相互チェックを説明した後、まとめの問いに移ります。肝心のところですので、生徒たちにはよく考えてもらいます。
【問2】モンテスキューは、どうして三権分立が必要だと考えたのですか?
★三権分立は「王権の制限」という考え方から生まれたこと、「権力の集中と濫用を防ぐしくみ、独裁を防ぐしくみ」として世界中に広まってきたこと、以上を確認します。
■最後に、「啓蒙思想とフランス革命」と題したプリントを配ります。プリントは、モンテスキュー、ルソー、理性の光、共和国の女性像を扱ったものです。(ルソー以下は、あとの授業で取り上げます。)
■プリントに載せた『法の精神』の次の一節を読んで、三権分立論の理解を共有します。
<もし同一の人間(あるいは執政者)が、三つの権力、すなわち法律を定める権力、公共の決定を実行する権力、罪や私人間の係争を裁く権力を行使するならば、すべては失われるであろう。>